読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は“足”のスペシャリスト、元巨人の鈴木尚広氏だ。 Q.第2リードの取り方がうまくありません。シャッフルの正しいやり方、その際の意識など、教えてください。(山梨県・15歳)
A.シャッフルで大事にすべきなのはリズム。当たった直後に右足で判断するのがベスト。
イラスト=横山英史
第2リード、そしてシャッフルは質問の方が悩むように、決して簡単なものではありません。
ちなみにシャッフルが分からない方のために簡単に説明すると、ランナーがリードを取ったあと、ピッチャーがモーションを起こした直後に、ホーム方向を向いて両足で跳ねるように次塁方向に進む仕草をしているのを見たことがあるかと思いますが、あれです。実際には跳ねているのではなく、リードの体勢から(すり足のように)左足を右足に引きつけてスタートし、と同時に右足を一歩次塁の方向に踏み出して、また左足を引きつけることを繰り返し、リードの幅を広げていきます。第2リードの際には必須のテクニックですね。
ここで大事になってくるのがリズムでしょう。シャッフルは基本的には2歩もしくは3歩程度のもので、ピッチャーがモーションに入り、シャッフルを開始して「イチ、ニ」でバッターのインパクトを迎えるか、「イチ、ニ、サン」の速いテンポで迎えるかのどちらかが一般的で取り入れやすいと思います。ところが、リズム感がないと、中途半端なタイミングでインパクトを迎えることになり、シャッフル後の次の1歩の判断が遅れる原因となってしまいます。リズムを意識してシャッフルを繰り返し、2歩なのか、3歩なのか、そのどちらかで当てられる(インパクトを迎えられる)ように練習をしてみてください。
難しいことを言うと、右足の着地とインパクトの瞬間が同時というよりは、当たった直後に着地して瞬時にゴーなのか、バックなのか、右足で判断するのがベストでしょう。同時だと頭で判断ができても体がついてこず、例えば、空振りや見逃しなどの場合、良いキャッチャーだとすぐにけん制が来て、逆を突かれたような形となって、刺されてしまうことも考えられます。
いつでも当たってからの右足判断で、進める、止まれる、戻れるができるようにしておきたいところですが、これはプロのレベルで求められる話ですから、参考までにとどめておいてください。もちろん、走塁への意識が高いのならば、チャレンジする価値はあると思います。
ホームへかえる確率を高めたければ準備が重要。二塁ランナーなら二遊間と外野の位置を常に確認。
進む、戻る、止まるは、右足が始点でないと難しくなります。ピッチャーにもさまざまなタイプがいるので、常に自分が合わせていくことが大切です。塁に出ていきなり合わせるのも難しい(※とはいえ、一番バッターなどで初回に出塁したら、その努力をすることが必要です)ので、ベンチでタイミングを計って準備をしておくべきです。
また、バッターにどういう特徴があるのか。例えば引きつけて打つタイプか、前でさばくタイプかなども当てる(バッターのインパクトを迎える)作業に関わってきますから、頭に入れておきましょう。これはチームメートですから、難しい作業ではないですよね。
いざベースに立って必ずすべきことは、キャッチャーが構えている位置はどこなのか、またその構えた姿勢を観察し、ピッチャーの球種は何なのかを考えることです。野球というのはこのように考えるスポーツなので、例えば無死二塁で二塁ランナーならば、打席にいるバッター(※右打者)が何を思っているのか、考えることも重要でしょう。
右打ちのサインがベンチから出ているなら話は別ですが、意識的に右に打とうとしているのか、それとも強引に引っ張ろうとしているのか。第2リードをしっかりとることももちろん大切ですが、よりホームへかえる確率を高めたければ、それ以前の準備が重要で、右打ちをしそうだからゴーだとか、引っ張りそうだからスタートは野手の間を抜けてからなど、頭に描いておくだけでもスムーズな一歩目を切ることができます。何も頭にない状態で当たってからジャッジすることは私でも難しい。
それでも第2リードが苦手という方は、二塁ランナーの場合、一球ごとに二遊間と外野の位置を確認してください。そうすると、リードが下手でも打球に対しての反応に迷いがなくなりますよね。できることだけはしっかり。その繰り返しでリードにも自信を持てるようになりますよ。
●鈴木尚広(すずき・たかひろ) 1978年4月27日生まれ。福島県出身。相馬高から97年ドラフト4位で巨人入団。走塁のスペシャリストで、代走での通算盗塁数132は日本記録である。16年現役引退。現役生活20年の通算成績は1130試合出場、打率.265、10本塁打、75打点、228盗塁。