中日の森野将彦が引退を表明した。2017年9月22日現在、通算1581安打。2000年代の黄金時代を支えたユーティリティーだ。今回は9月24日、ナゴヤドームでの引退試合まで、森野の野球人生を何度かに分け、紹介していきたい。 「もっと下げていいですよ」

今季は7月2日の広島戦に「五番・一塁」でスタメン出場。1打席目でヒットも右足太もも肉離れで交代。そのまま二軍へ
2010年はキャリアハイの打率.327でベストナイン、11、12年は打撃不振に苦しむも、13年は途中からセカンドでスタメンとなり、16本塁打、打率.286、さらに14年は一塁に回り、初のゴールデン・グラブにも輝き、自身2番目となる146安打と完全復活を遂げた。
しかし15年は故障もあって大不振。オフの契約更改では20パーセント減を告げられたが、「もっと下げていいですよ」と答えたという。
小誌が一番最近、森野から長い話を聞いたのが、次の年2016年に小社から刊行した『中日ドラゴンズ80年史』シリーズ2のインタビューだ。序盤戦、二軍落ちしていたときで、ナゴヤ球場でのウエスタンの試合の後、選手寮のロビーで話を聞いた。
故障していたわけではなく、世代交代の動きも感じていたと思う。普通なら取材を断ってもおかしくない時期だが、嫌な顔もせず、笑顔を浮かべながら質問に答えてくれた。
「僕は自分のことをそこまで追い詰めないので。つらいことはつらい。でも、マイナスのイメージというのは負の連鎖になってしまうので、極力いいことを考えるようにしています。けっこうのほほんとした性格ですしね」
取材した記者は、戻った後、「すっかりファンになってしまいました」と話していた。
15年シーズンを終え、安打数は1533本。14年までは、9年連続100安打以上をマークしていた。まさかこの年38安打、さらに17年10安打で引退を決意することになるとは思わず、当然、届くものと仮定して尋ねた「2000安打」についての言葉で、この短期連載を締める。
あとは、みんなで9.24、「選手・森野将彦」の最後の雄姿を見届けたい。
「きょうはウエスタンのゲームでしたが、たぶん全員合わせても僕の1533本には届かないって話が出ていました(笑)。正直、2000本については何も考えていない。みんなそうだと思いますけど、打ったら打ったですし、さすがにあと5本くらいになったら考えるでしょうけど、いまは2000本を打つのがどれだけ大変かも分からないですし、ただ、1本でも多くヒットを打ちたいだけです。いまの安打数だって、そう思って積み上げてきたものですし、(2000安打に)届かなくても、僕の誇りですよ」
<了>
写真=前島進