
サヨナラ勝ちに喜ぶ阪神ナインを背に憮然とした表情でベンチに引き揚げる前田
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は9月24日だ。
2002年、前年限りで勇退した
長嶋茂雄監督からバトンを受けたのが、ジャイアンツ愛を掲げる
原辰徳。開幕は故障者もあって出遅れたが、6月半ばから快進撃を見せ、優勝ロードを突っ走った。
9月24日は、マジックを1とした首位・
巨人が、序盤首位もサッカー日韓ワールドカップ中に変則日程の中で失速し、この時点では5位まで転落していた阪神の本拠地・甲子園に乗り込んでの一戦だ。
試合は、思った以上に殺気立った。巨人が2回表、
江藤智のタイムリー、4回表には
阿部慎之助のソロで2点。対して阪神は6回裏、
今岡誠のソロで1点を挙げ、巨人が2対1とリードする。
目の前で胴上げを見たくない阪神ファンの気持ちを両軍バッテリーの攻めがあおった。互いに内角を厳しく攻め、死球が相次ぐ。7回表、
高橋由伸が当てられたときには、原監督が飛び出し、乱闘寸前となっている。
しかしその直後、ナゴヤドームでマジック対象の
ヤクルトが敗れ、巨人が優勝決定。電光掲示板にその結果が出ると、レフト側の巨人応援団が一斉に沸いた。
あとは勝利で優勝を飾るだけと思われた9回裏だった。先頭打者の濱中おさむが
河原純一から同点ホームラン。試合は、そのまま延長戦に突入する。互いに決め手を欠いたが、12回裏、阪神が一死満塁とすると
前田幸長が「カットボールが切れすぎた」(前田)暴投。優勝決定試合が、まさかのサヨナラ負けとなった。
その後、六甲おろしの大合唱の間、巨人ナインは阪神ファンに配慮し、一度、ベンチ裏に消え、その後であらためて姿を現し、原監督の胴上げ。優勝インタビューを行った。前田は「俺らしいね。まさか“胴上げ投手”になるなんて」と笑っていた。結果的には、あの暴投があったからこそ、あれだけ殺気立っていた阪神ファンが巨人に盛大な拍手を送るハッピーエンドになったことは間違いない。
写真=BBM