
最後の打者・嶋を打ち取り、雄たけびを上げる井川
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は10月4日だ。
阪神の左腕エース・
井川慶が2004年10月4日の
広島戦(広島)で快挙を成し遂げた。前年には20勝5敗でチームのリーグ優勝に貢献した井川だが、この年は、ここまで12勝11敗。チームも連覇はならず、先発ローテをしっかり守りながらも、不本意な年であった。
そのうっぷんを晴らすかのごとく初回から井川は飛ばし、7回まですべて3人ずつで終わらす、パーフェクトピッチング。しかし、8回一死の後、一塁の
関本健太郎のエラーで走者を出してしまう。関本は試合中、試合後と何度も井川に謝りに来たというが、井川自身は「パーフェクトがなくなったことで、逆にフォアボールが怖くなくなり、思い切り攻めることができました」と振り返る。
ここで広島は代打・
前田智徳を送った。このシーズン、初めて井川とバッテリーを組んだ捕手の
野口寿浩は、前田から「すさまじい気迫を感じた」と言い、井川も「打たれるとしたら前田さんかな」と内心思っていたという。結果、果敢に内角を突いた球が死球となるが、後続はしっかり打ち取った。
9回も先頭打者に四球を出したが、そこからさらにギアを上げる。簡単に二死を取って、迎えたバッターが、この時点でのセの首位打者・
嶋重宣だった。井川はここで「変化球にちょこんと当てられてのヒットが嫌だったので」と4球すべて渾身のストレート勝負。最後は三振に打ち取り、雄たけびを上げた。
その後、マウンドで仲間たちに抱え上げられ、笑顔を見せた井川だったが、試合後のコメントは、「普通の試合が終わった感じです」と淡々。
独特の哲学を持ち、のちメジャーでも投げた井川は、いまも独立リーグの現役投手だ。
写真=BBM