今年は10月26日に行われるドラフト会議。毎年、金の卵たちが、どの球団へ進むか大きな注目を集める“一大イベント”で、さまざまなドラマも生まれる。今年で53年目を迎えるドラフト会議の歴史を週刊ベースボールONLINEでは振り返っていく。 恩師との約束を果たした安楽

恩師・上甲氏の写真とともに会見に臨んだ安楽
2014年10月23日 第50回ドラフト会議 (グランドプリンスホテル新高輪)
[1位選手]
ヤクルト 竹下真吾(ヤマハ)
楽天 安楽智大(済美高)
DeNA 山崎康晃(亜大)
西武 高橋光成(前橋育英高)
中日 野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)
ロッテ 中村奨吾(早大)
広島 野間峻祥(中部学院大)
日本ハム 有原航平(早大)
阪神 横山雄哉(新日鉄住金鹿島)
オリックス 山崎福也(明大)
巨人 岡本和真(智弁学園高)
ソフトバンク 松本裕樹(盛岡大付高)
よく「石の上にも3年」というが、プロ野球の世界でも3年はある程度、見切りの基準となっている。
いまなら、この14年ドラフトの15年入団組となるだろう。確かにいろいろな意味で岐路に立っている選手が多く、1、2位の選手ながら早くも戦力外を通告された男もいる。
話題になっているのは、ロッテの2位・
田中英祐の戦力外である。京大からのプロ野球選手、マスコミが記事にしやすいこともあって、大きな話題となった。三井物産の内定を蹴ってのプロ入りでもあり、おそらく、いろいろな意見があるだろう。ただ、結局、人が何を選ぶかは本人の意思であり、その選択が正しいのかどうかも、その本人にしか分からない。
感傷的な記事を書くのが目的ではない。時計の針を戻そう。
この年のドラフトがやや盛り上がりに欠けたことは事実だ。それは、本来はドラフトの主役であるはずの安楽智大の故障がある。甲子園の成績を見れば、まさに「怪物」だ。複数球団の争奪戦となってもおかしくなかったのだが、故障の不安もあって動く球団が少なく、ヤクルトの一本釣りが予想された。それでも前日まで有原指名を明言していた楽天が急きょ入札して抽選となり、“後出し”の楽天が当たりクジを引き当て、入団となっている。
会見では9月急逝した恩師・上甲正典監督の写真を掲げ、「監督さんとの1つの約束でしたドラフト1位の夢をかなえることができ、自分自身少しほっとしています」と語った安楽。このままで終わってほしくない男だ。
1巡目では、まずは即戦力と評価が高かった大学No.1右腕、早大の有原航平をDeNA、広島、日本ハム、阪神の4球団が競合し、日本ハムが獲得。12球団OKのスタンスだったが、日本ハムが決まった瞬間、思わずガッツポーズ。意中の球団の1つであったことがうかがわれた。有原は今季2年連続2ケタ勝利ながら10勝13敗の負け越しでは納得できまい。
有原と同じく、早大からは攻守走がそろい、内外野も守れる中村奨吾がロッテに単独指名の1位で入った。こちらはやや時間がかかったが、今季は確実に手ごたえをつかんだはずだ。新体制となる来季にレギュラー定着をかけたい。

仲間たちに祝福される京大・田中。まさか3年で戦力外とは……
チームとしての最大の成功はDeNAだろう。1位で守護神の山崎康晃を獲得。ベビーフェースだが、何度も何度も修羅場を経験しながら必死にはい上がる不屈の“亜大男児”だ。2位でも左腕の
石田健大(法大)、3位が遊撃手・
倉本寿彦(日本新薬)と3人が第一線で働いている。
西武では先発で一本立ちが期待される高橋光成、3位には外野に回ってブレークが期待される
外崎修汰(富士大)。広島では
緒方孝市監督が足に惚れた野間峻祥が1位で、2位には今季大ブレークし、規定投球回には達していないが、15勝を挙げて勝率第一位となった、これも亜大の
薮田和樹もいる。ほかはオリックス7位に
西野真弘(JR東日本)が16年にブレークした。
巨人には2位で中継ぎの
戸根千明(日大)、15年9勝の
高木勇人(三重重工名古屋)もいるが、いまが上り調子というわけではない。ここでは1位の岡本和真に何としても結果を出してほしいところだ。
残念ながら、いまの時点では伸び悩みが目立つ。一番厳しいのは、社会人中心にこだわった中日だ。エースナンバー20番をもらいながら今季戦力外となった野村亮介が1位。全体で9人を指名したが、現状では誰も一軍に定着していない。
ソフトバンクは1位の松本裕樹は今季ブレークしかけたが、あまりの層の厚さにチャンスをつかめずにいる。ほか5位、甲子園春夏連覇の
島袋洋奨(中大)にはなんとかひと花を咲かせてほしい。
このまま谷間のドラフト世代となってしまうのか。それとももうひと頑張りできるのか、2018年が問われる男たちだ。
<次回に続く>
写真=BBM