
日本一を決め、胴上げされる権藤監督
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は10月26日だ。
やはり、最後を締めたのは大魔神・
佐々木主浩だった。最後の打者・
金村義明を併殺打に打ち取り、念願の日本一達成。就任1年目の
権藤博監督が本拠地横浜の空を10回舞った。
「しびれました。本当に感激しています。ビジターのユニフォームでペナントレースで胴上げされ(
阪神戦=甲子園)、今日ここでホームのユニフォームで胴上げされる。まるで夢のようです」
ふだんはクールな権藤監督の声が震えていた。
1998年の横浜ベイスターズは、とにかく強かった。
大砲はいないが、送りバントもほとんどせず、常にイケイケ。打ち出したら止まらないマシンガン打線と、1勝1敗45S、防御率0.64をマークした抑えの佐々木をはじめとする盤石のリリーフ陣、さらには超放任の権藤監督で話題となった横浜。圧倒的強さで38年ぶりのリーグ優勝を果たすと、日本シリーズでは、
東尾修監督率いる
西武と対戦する。
本拠地で2連勝の後、移動日と雨の順延をはさみ、敵地・西武ドームで痛恨の2連敗。それでも権藤監督は「仕方がない」と、まるで他人事のようにサバサバしていた。
このままもつれるかと思ったが、第5戦は横浜がなんと17対5の大勝。ペナントレース終盤同様、一気にお祭りムードとなる。
再び横浜に戻った10月26日、第6戦が行われた。
権藤監督は先発にシリーズ初登板の
川村丈夫を起用。川村は「とにかくぶざまな投球はしたくなかった」と力投する。対して西武はエース・
西口文也を立て、前戦とは一変。互いに譲らぬ緊迫の投手戦となった。
0対0の均衡を破ったのは横浜だ。8回裏一死から
波留敏夫が四球。続く
鈴木尚典の当たりは二ゴロとなり、二塁手の
高木浩之は一塁走者・波留にタッチして一塁に送球したように見えたが、塁審が認めず、一塁も鈴木尚の足が一瞬早く、オールセーフ。ローズの中飛の後、
駒田徳広がタイムリー二塁打で2点を先制した。
駒田は第4戦まで15打数2安打と大不振だったが、第5戦で4安打5打点、さらに、この大事な場面での貴重な一打。ベテランの意地が垣間見えたシーンだ。
最後は、満を持して佐々木が登板。しかし
大塚光二のレフト前のライナーを照明が目に入った鈴木尚が後逸、三塁打になる。大塚はこれで6打席連続安打だった。その後、野選もあって1点を失ったが、なんとか後続を打ち取り、ゲームセット。
横浜は今季、この98年以来の日本シリーズ出場となる。ペナントレースは3位とあって、いろいろ言われているが、彼らには、この日の権藤監督の最後の言葉を贈ろう。
「終わりよければすべてよし!」
健闘を祈る。
写真=BBM