
東大2回戦、9回代打で出場した明大の主将・中野
現時点で、できることはすべてやりきった。この1年間、明大をけん引してきた中野速人主将(4年・桐光学園)のユニフォームは、神宮の赤土で汚れていた。
明大は東大との最終カード(10月24日)を連勝で全日程を終えた。8勝3敗、勝ち点4。優勝の可能性を残す慶大(現在、7勝3敗、勝ち点3)が28日から予定される早慶戦で1敗すれば、明大のリーグ制覇が決まる。
つまり、慶大が優勝するには、早慶戦で連勝するしか道はない。明大は「結果を待つのみ」という状況となっている。
優勝すれば、秋の大学日本一を決める明治神宮大会に出場できるが、V逸の時点で4年生は引退。明大は次のステージへの進出を信じて数日間、練習に励むことになる。
東大2回戦。明大が6対1とリードした9回表二死走者なしで、代打に告げられたのが主将・中野だった。今秋の出場はここまで、代打のみの2試合。出番は少ないが、ベンチに欠かせない精神的支柱として、チームを支えてきた。
背番号10を着けるキャプテンは「大学で引退するので、野球人生最後になるかもしれない」と、神宮の打席を完全燃焼した。マウンドにはドラフト候補左腕・
宮台康平(4年・湘南)。「緊張しながらも、楽しかった。同じ神奈川の高校である、宮台と対戦できて良かったです」。ゴロで一塁ベースカバーに入った宮台と、交錯しそうになったところを避けるため、ヘッドスライディング。だが、間一髪で及ばず、アウトとなった。明大は9回裏に東大の反撃に遭うも、6対3で逃げ切った。
明大は春5位。中野は「苦労の連続だった」と振り返る。厳しい夏場を経て「4年生がまとまった。それが、春と比べて変わった部分です」。明大は合宿所のトイレ掃除ら、雑用を最上級生がこなす伝統がある。そうした真摯な姿勢が、今年の4年生にもしっかりと継承され、卒業後の人生の肥しとなる『人間力』が構築されたのである。
「早慶戦を待つだけ。残りの期間もできることを100パーセントやって待ちたい。このチームメートと長く、野球をやりたいです」
主将・中野は爽やかに語った。結果は神のみぞ知る――。
文=岡本朋祐 写真=井田新輔