
サヨナラでの日本一にサファテも喜びを爆発させた
うなりを上げる剛速球は3イニング目に入っても衰えることはなかった。
ソフトバンクの絶対的守護神・サファテ。11月4日、日本シリーズ第6戦(ヤフオクドーム)。2対3とビハインドの9回表、マウンドに上がり
DeNA打線を三者凡退に抑えると、その裏、
内川聖一が起死回生の同点弾。すると、サファテは10回表もマウンドに向かい走者を出しながらもスコアボードにゼロを刻む。さらに、10回裏、味方打線が得点を奪えずに延長戦が続くと、11回表もその姿がマウンドに。「チームのために――」。3イニング目も右腕を振り続け、DeNA打線を抑え込むと、その裏、
川島慶三のサヨナラ打で日本一が転がり込んできた。
「もう全部使い切った。明日の分は残っていない。今日勝つしかないと思った」と精も根も尽き果てた守護神の労をねぎらうかのように、日本シリーズMVPの栄誉はサファテの頭上に輝いた。
2年ぶりの日本一に輝いたソフトバンク。この男なくして、今季の優勝を語ることはできないだろう。今季はまず外国人投手の最多セーブ記録を更新し、通算200セーブ達成、史上2人目となる3年連続40セーブ、そしてシーズン最多セーブのプロ野球記録更新と、次々に記録を打ち立てた。防御率は一時、0点台に。リーグ優勝までにセーブシチュエーションでの失敗はわずかに1度だけと驚異の成績をマーク。サファテの登板は、ファンが勝利を確信する瞬間だった。
守護神にとって、V奪回は悲願であった。昨季は同点の場面での登板だけで7敗を喫し、チームは
日本ハムに大逆転で優勝をかっさらわれた。その差は2.5ゲームで「昨年は自分が同点で何度も失敗した。優勝を逃したのは自分のせいだ」と言い、V逸の責任を一身に背負い込んだ。
今季は先発陣のケガ人続出、不振、打線の不調などもあり、過去に例を見ないペースで登板を重ねてきた。先発陣の奮起を促すコメントを発したことが1度だけあったが、それもチームを思うからこそ。「リードした試合の最期に投げるのが自分の仕事。とにかくチームが優勝することが目標だ」と言い続けてきたサファテにとって、何よりも欲しかったものが、この日本一だったのだ。
写真=湯浅芳昭