ひと口にアンダースローと言ってもタイプはさまざまだ。例えば
ロッテで活躍し、アメリカ独立リーグでも投げた渡辺俊介(現・新日鐵住金かずさマジック)と牧田和久(
西武)。この2人も打者目線で見ると、投球動作を始めてから球が放たれるまでの時間が真逆。渡辺はなかなか球が出てこない。だから、打者は体が前に突っ込んでしまう。反対に牧田は前足が地面に着いた瞬間、球が出て来る感覚なので、打者は差し込まれてしまう。
「僕はどちらかというと前に行きたいんですけど、
俊介さんはより遅くというか。いわゆる前後の緩急。同じアンダースローでも、全然違うタイプですよね」と牧田も言う。
ただ、フォームで緩急を作って“間”で勝負する渡辺のようなタイプはアメリカ球界では通用しづらいという。外国人打者はテークバックが小さく、投手がボールをリリースした瞬間に始動する。リリース後にタイミングを取るので、フォームの“間”で勝負しても130キロに満たないスピードでは対応されてしまうのだ。
2004年の日米野球で渡辺はカール・クロフォード(元レイズほか)に本塁打を打たれたが、その際の「変わったところからボールが出てくるけど、そこだけを見て、あとはコンタクトしただけ」というコメントも、それを証明しているように思う。
だが、WBCなど国際大会でも証明されているが、渡辺とは真逆の牧田ならアメリカ球界で通用する余地は十分にある。ボールそのもの強さで勝負でき、アンダースロー特有の球の軌道がさらに生きるからだ。
「やっぱり浮いてはいないけど、オーバースローに比べたら、アンダースローの軌道は浮いているように見えますから。これは特に海外で有効。向こうは上から投げる角度ある球が多いですから。
上原浩治さんが活躍しているのも、スピンの効いた、浮き上がるように見える真っすぐがあるからだと思います」(渡辺)
アンダースロー自体は海外にもたくさんいる。だが、彼らは落ちる軌道を描くシンカーばかり投げ、浮き上がるストレートは投げない。フォームがアーム式で、腕が体から離れているので、それが投げられないのだ。
このオフ、ポスティングシステムを使って、メジャー・リーグへの挑戦を目指す牧田。「生まれ変わってもこの投げ方をやりたい」と言うほど、アンダースローに誇りを持っている。ぜひ、夢を叶えて、メジャー球界にインパクトを与えてもらいたい。
文=小林光男 写真=大泉謙也