
首位打者の宮崎はインコースを打つ際、アッパースイングのイメージでバットを出すという
「内角のボールはアッパースイングです」。今季、プロ5年目で初の首位打者のタイトルを手にした
DeNAの
宮崎敏郎が高打率を残すことができた理由の一つに挙げたキーワードだ。
これを聞いたとき「またか!」と思った。というのも意識的にアッパー(のイメージで)でスイングする打者が確実に増えているからだ。典型が「とにかくフライを打つことがテーマです」と言い切ってしまう
ソフトバンクの
柳田悠岐だろう。
近年、打ち上げることを怖がらない打撃論が浸透している。「フライボール革命」とも呼ばれているこのスタイル。打球方向の分析や人工芝の増加によってゴロでもフライと同程度にアウトになる可能性が増えた。であれば、より強く振って長打が期待できるスイングを徹底する──というようなデータに基づいた考え方だと理解している。
では、アッパースイングの技術的なメリットはどこにあるのか。振り返れば現役時代の
稲葉篤紀(元
日本ハムほか、現侍ジャパン監督)や
ラミレス(元
ヤクルトほか、現DeNA監督)ら超一流の素振りも完全にアッパースイング。彼らが下からバットを出すのが不思議でしょうがなかった。「ボールの軌道にスイングを入れやすい」とか、「インパクトまで距離が取れる」などと説明されるが、正直よく理解できない。
ひと昔前までは、バットを構えたトップから最短距離でミートポイントへ振り下ろすのが当たり前。つまり、ダウンスイングやレベルスイングがお手本だった。しかし、現在はアマチュアの指導でもアッパーのスイング軌道(“縦振り”とも言われる)をあからさまに否定する現場は少なくなってきているようだ。
先日、甲子園出場を控える強豪校の打撃練習を取材中に、コーチに尋ねてみた。
「なぜアッパースイングなんですか?」
「ダメですか?ゴロもフライも同じ1アウトですよ」
先入観を取り払い、根本的な発想の転換が必要だと思った。
文=滝川和臣 写真=小山真司