背番号は選手たちの「もうひとつの顔」だ。ある選手が引退しても、またある選手がその「顔」を受け継ぐ。その歴史を週刊ベースボールONLINEで紐解いていこう。 古くから豪打の系譜が
「6」の物語が幕を開けるのは、プロ野球の草創期にさかのぼる。
巨人の
沢村栄治と名勝負を繰り広げた
阪神の
景浦将だ。三塁や外野だけでなく、投手としてマウンドにも立った景浦だが、沢村との対決で観衆が沸いたのは、投げ合い以上に、やはり打者として、だ。景浦は桜の木でできた1キロ以上のバットを振り回し、その豪打は海内無双と称えられた。
一方の沢村は「景浦さんには絶対に打たれたくない」と闘志を燃やした。巨人と阪神との試合が現在も“伝統の一戦”と呼ばれるのも、この景浦と沢村の激闘が起源と言える。
続いて2リーグ分立後、西鉄黄金時代に打線の主軸となった
中西太。その打球は低い弾丸ライナーのまま場外へ。そんな漫画のようなホームランを放った豪傑だ。史上初となる3度の三冠王に輝いた落合博満も、豪打だけの打者ではないが、
ロッテと中日で「6」だった。
広島の
小早川毅彦や阪神の
金本知憲、現役では
日本ハムの
中田翔も豪打タイプだ。
【12球団主な歴代背番号「6」】
巨人
岩本章、
土井正三、
篠塚利夫(和典)、
川相昌弘、
坂本勇人☆
阪神 景浦将、
小山正明、
藤田平、
和田豊、金本知憲☆(監督)
中日
野口明、
井上弘昭、落合博満、
井端弘和、
平田良介☆
オリックス 石井晶、
大橋穣、
熊野輝光、
田口壮、
宗佑磨☆
ソフトバンク スタンカ、
国貞泰汎、
新井宏昌、
湯上谷宏、
吉村裕基☆
日本ハム
皆川定之、
青野修三、
柏原純一、
田中幸雄、中田翔☆
ロッテ
佐々木信也、
荒川博、落合博満、
初芝清、
井口資仁☆(監督)
DeNA 森徹、ボイヤー、
高木嘉一(由一)、
中根仁、
白崎浩之☆
西武 中西太、
鈴木治彦(葉留彦)、
田辺徳雄、
後藤武敏、
源田壮亮☆
広島
川原政数、
ライトル、小早川毅彦、
梵英心、
安部友裕☆(2018~)
ヤクルト 赤木健一、
中野孝征、
永尾泰憲、
水谷新太郎、
宮本慎也 楽天 西谷尚徳、
塩川達也、
内村賢介、
藤田一也☆
(☆は現役)
巧打の内野手たち

巨人・川相昌弘
その一方で、巧打が光る内野手たちが着けてきた背番号でもある。巨人V9戦士の土井正三、阪神の藤田平らがイメージを築き、巨人では篠塚利夫(和典)から川相昌弘を経て、現在は坂本勇人の背に。阪神では和田豊が受け継いだ。
ほかにもヤクルトで宮本慎也が、中日では井端弘和が長きにわたって背負い続け、チームの精神的支柱という役割も担った。宮本の現役引退後、ヤクルトの「6」は欠番となっている。通算533犠打の世界記録を持つ川相を筆頭に、和田、宮本、井端はバントの名人でもある。彼らの共通点は巧打だけでなく、内野守備の名手であること。特に二遊間で絶対的な安定感を誇った。どちらかと言えば豪打タイプだが、日本ハムの田中幸雄もゴールデン・グラブ5度の名遊撃手だった。
古くは小山正明やスタンカなどの好投手もいた「6」だが、豪打と巧打では一貫性に欠けるのも特徴と言える。和田の「6」が金本に継承されて豪打のナンバーとなった一方で、落合の「6」は中日で井端に継承されて巧打のナンバーに。他方、ロッテでは初芝清を経て井口資仁が継承したことで、ほぼ一貫して豪打の系譜となっている。
井口は監督としても金本と同様に「6」を着け続けることに。2018年は選手として球史に名を刻んだ2人の監督が「6」で采配を振るう。新しい印象が「6」に築かれそうだ。
写真=BBM