
亜大・小山翔吾は12月9日の創部60周年祝賀会で、デビュー曲『今すぐ逢いたい』を初披露した
目が点になった。毎年、秋のリーグ戦終盤になると、大学4年生の進路先を野球部のマネジャーに依頼する。企業名が羅列されている中で、亜大・小山翔吾投手(4年・加藤学園高)の欄には「歌手」と書いてあった。
右腕・小山は2年秋のリーグ戦で1試合の登板経験はあるが、3年秋が終わった時点で卒業後は歌の世界で勝負していくことを決めていた。それから1年――。“真相”が明らかとなったのは、野球部創部60周年祝賀会が行われた12月9日であった。
小山をプロデュースしたのは亜大・生田勉監督とかねてから親交のあったDEENのボーカル・池森秀一氏。亜大野球部の「応援団」だという池森氏はこの日のパーティーにも出席し、1990年代のヒット曲『瞳そらさないで』を熱唱。その後、緊張の面持ちでステージに立ったのが小山だった。
デビュー曲『今すぐ逢いたい』を初披露。さすが、4年間の猛練習で鍛え上げたボイス。声量が素晴らしく、歌詞も一言一句に魂を込め、約450人の出席者のハートを一瞬にしてつかんでいた。神宮のマウンドに上がった経験値がここに生きているのか、大舞台でも堂々たるものであった。
「人の心に響く歌を歌っていきたい」
小山の同期で主将・
北村拓己内野手(4年・星稜高)は2018年から
巨人(ドラフト4位)でプレーする。小山とのエピソードを明かす。
「1年のときからカラオケに一緒に行き、皆の前で歌っていました。(歌手になりたいと)志を持ってやっていた。うれしいですし、日本中に夢を与えてほしいです」
プロ野球選手と言えば、スタジアムで流れる登場曲だ。北村は目を輝かせる。
「いつか自分も知名度が上がったときに、小山にお願いしたいと思う。これも、一つの夢ですね」
バラード調の『今すぐ逢いたい』。幅広い年齢層から支持を受けるような気がする。野球人から歌手への転身。元アスリートだからこそできる、アーティストとしての活動に期待したい。
文=岡本朋祐 写真=BBM