
早実時代から冬場は木製バットで振り込んでいた清宮。打撃面はプロのスピードに慣れれば問題ないだけに、出場機会を増やすためには「守備力」が問われる
歴代1位とされる高校通算111本塁打。打撃ばかりが注目される
日本ハムのスーパールーキー・
清宮幸太郎(早実)であるが、野球は「攻守走」の3拍子によって成り立つ競技だ。そこで、疑問符が付くのが、怪物の「守備力」である。
ドラフト会議では高校生最多タイ7球団競合。リーグの内訳を見ると、セ3球団(
巨人、
阪神、
ヤクルト)、パ4球団(
ソフトバンク、
楽天、日本ハム、
ロッテ)だった。日本ハム・
木田優夫GM補佐が当たりクジを引き当てた瞬間、ホッと一安心した。
それは、なぜか。「DH」があるパ・リーグのチームだから率直に、清宮の出場機会が広がると思ったのだ。
栗山英樹監督は清宮のポジションについて、すでに三塁手や外野手に挑戦させる「夢プラン」を披露しているが、相当の努力が必要であると、見ている。
清宮と言えば、早実時代、「三番・一塁」が定位置であった。2年春の東京都大会、チーム事情で背番号8(中堅手)を着けたが、2回戦で敗退すると、同夏にはすぐに慣れ親しんだ場所へと戻っている。ただ、三塁手は未知数。現状では、厳しいとしか言いようがない。
それは、なぜか。第一にスローイングに難があるということだ。世界一を遂げた東京北砂リトルではエースとしても130キロ中盤のストレートを投げ込んでいたが、その後、右肩を痛め、調布シニアでは野手に専念している。早実では入学時、投手としての起用にも期待が集まったが、本人に聞いた際にも、マウンドに上がるには難しいコンディションだったという。
この3年間、慢性的な痛みはなかなか取れないのか、試合前のシートノックを見ても、一塁手で全力で投げるシーンはほとんど見られなかった。しかも、上からではなく、横から投げることが多く、あるNPBスカウトは「プロ入りすれば、すぐに矯正される」と語っていたのを思い出す。
侍ジャパンU-18代表として出場したW杯(カナダ)でも、その姿勢は変わらなかった。キャッチボールでは他の選手と比べて遠投ができず、その相手が変更となったシーンもあった。今年9月中旬で全公式戦を終えた後は、ケアに専念しているであろうが、その回復具合が気になるところではある。
第二にキャッチング。ハンドリングが柔らかく、下半身の柔軟性にも長けており、内野手からの難しい一塁送球に対しても、まるで、力士の股割りのように大きく開脚して捕球する。華やかなプレーを披露する一方で、やや雑な場面も見られ、国際舞台ではイージーミスも目立った。このあたりも、プロの世界では許されないはずで、かなりの修正が入ることが予想される。
というわけで、未知数と言った「三塁手」が、最も可能性が持てると言っていい。栗山監督には既成概念を覆す、
大谷翔平の「二刀流」を実現させた実績がある。野球に対して真摯で、練習熱心な清宮だけに、熱血漢の指導が嚙み合えば、大型サードとして新たな才能を開花させるかもしれない。
ただ、新人合同自主トレ、キャンプ、オープン戦を通じた努力の末に「守備力」への疑問符がぬぐえなければ、1年目は最終的に「DH専念」という選択肢もある。最大の持ち味を生かす――。ディフェンス力は「継続課題」として、練習を重ねていけばいい。清宮はプロのスタートとして、パ・リーグ球団で良かったと思う。
文=岡本朋祐 写真=菅原淳