2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『大下引退の噂を追って~球道無限の天才に訪れた限界』
今回は『1959年9月30日号』。定価は30円だ。本文巻頭は『特集 次の隠し投手は誰か?~
巨人“隠し投手騒動記”』。独走でほぼセ優勝が決まったかと言われる巨人。次のターゲットは日本シリーズなのだが、
堀内庄の離脱もあって投手陣がどうも振るわない。
そこで緊急補強が行われているという話だ(当時は入団の期限はない)。まずは9月3日、近大の
中村常寿。秋季リーグを前に中退し、6日には背番号54で早くもベンチ入りした。さらに獲得に動いていたのが、日本通運のエース・
堀本律雄だ。社会人ナンバーワンと言われた本格派で、最終的には翌60年入団となったが、1年目から29勝で最多勝に輝いている。仮に日本シリーズ前に入団していたら、歴史どおり、南海・
杉浦忠の快投で南海が4勝0敗で日本一になれていたかは分からない。
9月6日に30勝を挙げた杉浦は評論家・芥田武夫との対談で登場。タイトルは『右腕の折れるまで!』だ。杉浦の話もいいのだが、ちょくちょく出てくる
野村克也捕手の話が面白い。
芥田 野村君はケガしないね。
杉浦 動きませんから(笑。※その前にファウルボールを追わないという話があった)。
芥田 松井(前年限りで引退したベテラン捕手)が、あいつはちっともケガをせん、だから私の出る場所がないんですと言って怒ってた(笑)。だけど、キャッチャーでケガをしないというのは運だな。人間の力でどうの、こうのというわけにはいかんからな。骨が太くできているのかな。
(中略)
芥田(新婚の杉浦の奥さん話の流れで)野球は見に行くんですか。
杉浦 僕は知らないんですが、時々来るらしいです。それを野村君がよく見つけるんです。ファウルを捕るときなんかに後ろを見るでしょう。そうすると見えるんですね。“きれいなのが1人光ってる”なんて(笑)。早いですよ。
芥田 わかった。ファウルを捕らないのは、そっちばかり見ているからだ(笑)。
38歳となった西鉄・
大下弘を扱った『大下引退の噂を追って~球道無限の天才に訪れた限界』という記事もあった。故障に苦しみ、尊敬する先輩・
川上哲治の引退で以前から「来年はぼくの番ですよ」と自ら語ることもあったらしい。
大下は引退後についてこう語っている。
「おれはバッティングコーチをする柄じゃないよ。そうかといって口下手だから野球解説もできない。引退すればいっさい手をひくよ。それよりどこかの高校チームの監督になったほうがすっきりするだろう」
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM