
キャッチボールも迫力満点
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は1月15日だ。
先日亡くなった
星野仙一氏が
阪神監督として優勝に輝いたのが2003年。そのいわば秘密兵器となったのが、レンジャーズから加入した
伊良部秀輝(故人)だった。
ロッテ時代、快速球投手として鳴らし、96年オフ、日米球界を巻き込む大騒動の末、三角トレードで
ヤンキース入りを果たした右腕だ。ただ、実力は折り紙つきながら心配されたのは性格面。メジャーでもトラブルメーカー的な存在となり、闘将・星野監督が、暴れ馬をどう“調教”するか注目されていた。
2003年1月15日は、伊良部が西宮市の鳴尾浜で自主トレを始動した日だ。ロッテ時代終盤、さらに米球界時代とマスコミを毛嫌いし、ハエ呼ばわりしたこともあった伊良部だが、この日は上機嫌。集まった約50人の報道陣の前で、たっぷり30分しゃべりまくった。
「チームメートとはディスカッションをしていこうと思っています。首脳陣の方々にもいろいろ相談していきたい。アメリカでは、勝てなかったとき、翌ピッチングコーチに来てもらって1時間も2時間も話し相手になってもらいましたから」
口調も丁寧。まるで別人だ。
さらに「投げ込みより、筋力トレで故障しにくい体を作る。疲労の回復も早くなるし」とも話していたが、メジャーで培ったものを日本球界で披露したい、伝えたい、という思いも持っていたのではないだろうか。
同年13勝を挙げ、優勝に貢献。それが剛腕伊良部の野球人生最後の輝きとなった。
写真=前島進