今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3500号が近づいている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『話題の人金田投手の心境』
今回は『1959年11月4日号』。定価は30円だ。巻頭グラビアは『300勝成る!』。もちろん、
巨人のベテラン、
別所毅彦だ。10月14日、国鉄戦(駒沢)で2回裏、3対3の場面で救援登板し、最後まで投げ切り、
スタルヒン(元巨人ほか)に次ぐ通算300勝を達成。
「うれしい。こんなうれしいことはない。きょうこの日まで幾たびか苦しい思いを重ねてきたが、その間のファンの声援は涙が出るほどうれしかった」と語り、さらに「ワイフにもありがとうと言いたい。この300勝の大半がワイフの力によるものだったといっても決して過言ではないだろう」。
愛妻家の“べーやん”らしい言葉も添えた。
ペナント最終盤とあって3年連続30勝の西鉄・
稲尾和久、9年連続20勝の国鉄・
金田正一を称えるグラビアページもあった。
本文巻頭は『特集 巨人・南海スパイ戦~首脳陣の握った秘密情報は……』。お互い優勝が早めに決まった分、首脳陣が相手チームの試合の視察を熱心に行っていたようだが、スパイ合戦というほどえげつなくはない。
座談会は前年同様、両チームで2本。巨人は
広岡達朗、
坂崎一彦、
藤田元司が登場し、『選手権はもらった!』。南海は
杉山光平、
杉浦忠、
野村克也が登場し『藤田は打てる!』だ。巨人は杉浦、南海は藤田元司と互いに相手エースの攻略がポイントになりそうだ。
今回は対談が3本あり、もう1本は『話題の人金田投手の心境』と題し、自ら移籍を決められる十年選手となった金田に評論家の
西澤道夫が迫っている。
十年選手に対するボーナスの金額がこの年から制限されたことに対し、「ただ単に金額の問題と片付けますけど、ボクらはいままで何のために連投連投、自分の体力を惜しまずやってきたか。これはひとえに10年たてば、こういうことがあるんだということを楽しみにやってきたんですよ」と金田。また、マスコミでは大毎への移籍が取りざたされているが、これについても「ウソです。デマです。ボク自体も最初から移籍することは考えたことない。ボクはあくまでもスワローズを愛している。ボクはスワローズをだれよりも愛している」と語っている。
ただ、周囲の目は違ったようだ。『燃えさかるストーブリーグ』では、日本通運・
堀本律雄投手の国鉄と巨人との大争奪戦が記事になっていた。そこにははっきり「金田投手が十年選手の特権を生かして国鉄を去っていくことはほとんど動かせない事実となった」とある。
なお、表紙は新人王候補の大洋・桑田武、東映・張本勲だが、このデザインとタイトルなら巨人、南海の選手で、と思わないでもない(着色でタイムラグもあったのかもしれないが)。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM