『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、今回はスタジアムに関して、だ。 ナゴヤドームの広さは捕手のリードを楽にする

ナゴヤドーム
僕が好きだった球場は、守備と攻撃で違うんですよ。
まず守りでいうと、やっぱりナゴヤドームですよね。とにかく広い。ピッチャーをリードするにあたって、広い球場というのは少し楽になるんです。
例えば、セ・リーグの横浜スタジアム、東京ドーム、神宮球場、昔の
広島市民球場ではアウトコース主体に攻めても軽々とホームランを打たれる可能性がある。でも、ナゴヤドームではある程度、外にきっちり投げていれば、バッターの右左にかかわらず、逆方向へのホームランというのは年に数本しかないんです。
そうするとアウトコースを軸に配球できる。バッターが外ばかり攻めてくるなと思っているところへ裏をかいてインサイドも使える。ナゴヤドームは配球的にもまったく変わってくる球場の一つ。楽といえば楽な球場ですよね。
攻撃面で好きだったのは、ドラゴンズにいたときはビジターの球場でした。横浜スタジアム、旧広島市民球場、東京ドーム、神宮。なかでも一番を挙げるとすれば、広島市民球場かな。あそこもやっぱり狭かったですよ。振り回さなくても打球がスタンドインしてくれる。
広い球場でもそんなに振り回さなくても飛んでいくということはのちのち理解していくんですが、当時はバッティングのこともいろいろ分かっていなかったから、ある程度振っていかないと逆方向へ飛んでいかないという意識があった。
でも、広島市民球場ではそこまで振らなくてもライトにもセンターにも飛んでいく。ですから楽な気持ちで打席に入れました。そうすると自然と好結果もついてくる。3連戦があれば、必ずと言っていいほどホームランを打っていた記憶がありますね。そうすると、ますます広島遠征が好きになってしまう(笑)。
守りづらかった球場は2つ

神宮球場
逆に、守りづらかった球場は2つあります。
一つは札幌ドームです。なぜかというと、ファウルグラウンドが広くて、キャッチャーのポジションからバックネットまですごく遠いんです。ですから、ワンバウンドを後ろにそらして、ほんの数秒ボールを見失ったら、常に2つ進塁を許してしまう。一塁から三塁へ。暴投は何がなんでも止めなくちゃいけない。キャッチャーとしては守りづらいというか、嫌な球場でした。
もう一つは、神宮ですね。キャッチャーが座っていて、フィールド全体が視界に入るじゃないですか。そうすると、外野手のくるぶしぐらいから下の足が見えないんです。キャッチャーの目線というのは通常、上目使い。そうすると腰も尻も落とせるんです。それが、神宮では上から目線になってしまって、腰が浮いてしまうんですよね。ものすごく構えづらい球場でした。
キャッチャー付近の地盤がきっと外野に比べて高いのでしょうね。ピッチャーもマウンドこそあるんですが、投げ降ろそうとしても角度がつきづらいんです。ですから、これは言い訳になるかもしれませんが、どうしてもピッチャーの球が高め高めに浮きがちでした。低く投げようと思ったら今度は投げた瞬間にボールと分かるぐらいの低さ。程よい加減の高さに、ピッチャーは投げづらそうでしたね。
逆に、ナゴヤドームでは、ドラゴンズに限らず他球団のピッチャーも結構いいピッチングをしていました。球場の広さもあるし、マウンドの傾斜がピッチャーにとって有利な角度だったんじゃないでしょうか。
写真=BBM ●谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)
1970年12月21日生まれ。広島県出身。江の川高から89年ドラフト1位で大洋(現
DeNA)入団。2002年FAで
中日へ。14年から監督兼任。16年から監督専任も同年8月9日付で退任。現役生活27年の通算成績は3021試合出場、打率.240、229本塁打、1040打点。