
駆け出しのドジャース時代のレッドソックスのコーラ新監督。華麗な守備でファンを魅了したが、監督としてファンにどのような魅力的な試合を見せてくれるか楽しみだ
頭にグラブを被ったまま、笑顔でドジャー・スタジアムのグラウンドに飛び出し全体練習に向かう姿がいまだに印象に残っている。道具は大事に、と教わり育った日本人には少しびっくりした光景だったが、それもアメリカらしいな、とは思った。しかもその選手が守備で試合に出ているようなユーティリティーだったから、余計にびっくりしたというのが本音だ。
現在の日本のプロ野球でいえば
阪神時代の
大和(現
DeNA)のような抜群に守備がうまいユーティリティー。それがレッドソックスの新監督、アレックス・コーラの現役時代のプレースタイルだ。
野茂英雄氏や
石井一久氏がドジャースで活躍した2002~04年、シーザー・イズタリス(遊撃手)とコーラ(二塁)との二遊間コンビの守備は華麗でキレがあり、打球が飛ぶたびにワクワクさせられた。
コーラは引退後、テレビで解説者として活躍。昨年はアストロズのコーチとして世界一に貢献。実績を積んでの就任だけにどういう監督になるのか楽しみだ。そのほか、ヤンキースはアーロン・ブーンが新監督に就任。再建を目指すフィリーズは
巨人でプレー経験を持つ
ゲーブ・キャプラーが就任した。この3人の新監督は全員が解説者を経験している点が同じだ。
トラックマンなどのデータを駆使した作戦などにより、メジャーの試合も変化を見せてきた。監督の感性も大切だが、データに基づいた作戦も多くなった。それに対応できる監督として起用されたのがこの3人だと思うが、それ以上にスポークスマンとして話せる監督が必要な時代になってきていることも、就任の大きな要因であろう。
この3人の監督が今後どのような話術をみせるのか、それとも無難な話でまとめるのか、興味深い。特にコーラ監督には、現役時代のときに見せた可憐でピリッとした守備のような、キレのあるトークを。そして頭にグラブを被るユーモアを見せたときのような、ウィットに富んだトークに期待したい。
文=椎屋博幸 写真=Getty Images