今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 グラビアは「ミサイルは走る」

表紙は302勝の記念ボールを持った巨人・別所
今回は『1960年6月1日号』。定価は30円だ。グラビア巻頭は『ミサイルは走る』。好調を維持する大毎・
田宮謙次郎の走塁シーンからだ。大毎は5月10日現在で2位南海に2ゲーム差の首位にある。大毎では
榎本喜八が打率.413でリーグトップ。ショートインタビュー、『今週の話題』でも登場しているのだが、フォームの型についての話の中で詳しいことを聞こうとすると「荒川さんに聞いてくれよ」。先輩選手で打撃の師匠だ。その後、荒川の言葉もあった。
「バッティングには無の心境が必要だ。フォームにこだわってはならない。グラウンドでは、ただ打つことだけを考えればいいのだ」
本文巻頭は『まかりとおる19才〜球界のビート族・王と張本』。ビート族は米の異端の文学を指示する若者層を差す言葉のようだが、記事中には登場せず、タイトルのみで使用されている。登場するのは、いずれもプロ2年目で巨人・
王貞治と東映・
張本勲。王が中華民国(台湾)、張本が韓国籍。差別的なヤジもあったが、どちらも気にしていなかったようだ。
入団時の期待は王のほうがはるかに高かったが、1年目の成績は張本の圧勝。ただ、「ぼくはプロに入って1年でスターになった。つまり5、6段の段階を一段ずつ上がらず、一足で飛んだ。それだけに本当の野球は身についていない。これからいかにしてそれを埋めていくかです」と謙虚な言葉があった。一方、王への周囲の期待は変わらず高く、
水原茂監督は「王、長嶋が(打順で)並んだときが巨人の第三期黄金時代だ」と口癖のように言い続けていた。まさに“予言”だ。
連載『トップ・スター登場』は巨人・
長嶋茂雄が登場。さまざまな分野の50の質問をぶつけるコーナーだ。
「趣味は」の質問には、
「野球。野球が僕の職業であるとともに趣味だ。野球ほど楽しいものはない」
「いちばん尊敬する人は」の質問には、
「ナポレオンと川上(哲治)さんだ。2人とも僕の少年時代からの夢であり、希望でもあった。いまでも僕の胸中から焼き付いて離れたことはない」
ナポレオンのどこをそこまで尊敬するのかは聞いてみたい気がする。
座談会は『三原さんの旗のもとに』で、
三原脩が監督に就任した大洋から
土井淳、
秋山登、
近藤和彦、
桑田武、
黒木基康が出席。万年最下位の大洋は、この年はまだ4位ながら、台風の目になりつつあった。のちに言う、「三原マジック」について何か面白い逸話はないかと思ったが、「のびのびやらせる」「バントのサイン見落としで罰金1万円取られた」くらい。1万円の罰金は当時の球界で最高額ではないかという話だった。
広島は5月7日、地元で
阪神を破って創設11年目にして通算500勝。その勝利投手が
長谷川良平だったが、実は長谷川1人で3分の1ほどの179勝を挙げていた。まさに「小さい大投手」である。
なお、現在、週刊ベース60周年企画として「週べでつづる12球団史」を制作中。第1弾は3月14日発売予定の巨人編だ。この連載の筆者も微力ながら手伝っている。突然、休載となったときは、締め切り間際でドタバタしていたんだろうと、ご推測を……と書いたらストックしておきなさい、ともっともなご意見をいただいた。頑張ります。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM