広島・中村祐太投手

セットポジションの修正に取り組む中村祐
リーグ3連覇、そして悲願の日本一達成に向け、若手が活況な
広島春季キャンプ。高卒5年目右腕の
中村祐太も、飛躍が期待される投手の一人だ。
一軍デビューを果たした昨季に5勝をマーク。お手本のようなきれいなフォームから投げ込むストレートは球速以上の伸びを感じさせ、強心臓のピッチングでリーグ優勝に貢献した。
シーズン途中からは制球力や安定感を重視し、無走者でもセットポジションから投球していた中村祐。しかし「球威が上がるし、それが本来のスタイルなので」とオフにはワインドアップの投球フォーム固めに着手。今春キャンプでも継続して取り組んでいる。
ところがここにきて、新たな課題に直面している。
「ワインドアップは悪くないんですけど、セットポジションがしっくりきていないんです」
2月12日に行われた紅白戦では、2回無死一、二塁から、
高橋大樹に高めに浮いたボールをレフトスタンドに運ばれ、悔しげな表情を浮かべた。目標に掲げる開幕一軍先発ローテ入りへ灯った黄信号。しかし中村祐は、これまでの取り組みを継続していくと明かす。
「いいものをなくしてしまうよりも、ダメなところを直していきたい。どうしても『結果を出したい。出さなくちゃいけない』と力みが出て、高めに浮いた球を打たれてしまう。しっかりクイックを練習して、低めにコントロールするにはどうすればいいかを意識していきます」
安定感のあるジョンソン、
野村祐輔を筆頭に、
大瀬良大地、
岡田明丈ら2ケタ勝利の実績がある投手が名を連ねる広島の先発陣。高卒2年目の
高橋昂也らも高評価を得ており競争は激しいが、サバイバルレースから脱落するつもりはない。
「時間があるわけではないし、不安との戦いです。でも、やらないといけない。前向きに、自分の課題と向き合っていきたいです」
壁を乗り越えれば、さらに大きく成長できる。22歳の有望株は強い決意を胸に、ひたむきに汗を流している。
文=吉見淳司 写真=前島進