
実戦でも実力を発揮する西巻
楽天のドラフト6位が、チャンスをつかむべくアピール中だ。
西巻賢二がキャンプで一軍メンバーに帯同することを通達されたのはキャンプインの前日だった。二塁手の
藤田一也が左ふくらはぎを損傷し、二軍スタートとなったため、入れ替わるように一軍帯同が決定。
茂木栄五郎が右ヒジ手術の影響で復帰が3月中旬となっていることもあり、内野手の人数を確保するため、という意味合いも強い中での昇格でもあった。
だが、キャンプインすると攻守で躍動し、一軍の2次キャンプにも帯同。
梨田昌孝監督も「守備はもともと力があると思っていたけど、打撃もそん色ない」と高評価を与えている。
仙台育英高から入団したが、もともとは育成の色が濃い指名だった。西巻の本職である遊撃には3年目の茂木が定着し、二番手にもまだ若い
三好匠が控える。二塁にはゴールデン・グラブ賞3度の藤田がおり、
銀次も守れる。内野の層が厚い中で、球団は西巻を即戦力としてではなく、数年かけてゆっくりと育てていくつもりだっただろう。
しかし、西巻は自力でその未来を変えようとしている。もちろん出番は限られてくるだろうが、「1日でも早く一軍に」という西巻の目標は明らかに、入団前よりも早まってきている。
だからこそ、注目すべきはここからだ。オープン戦が始まり、プロの投手との対戦も、キャンプのとき以上に厳しくなってくる。そこで、どこまでアピールできるか。得意とする守備力を中心に、チームバッティングや足を使った攻撃にも参加する必要が出てくるだろう。
また、ケガのため二軍調整中の茂木、藤田も開幕に向け状態を上げてくるだけに、一軍をかけた戦いはこれまで以上に熾烈を極める。
球団からの下馬評を覆し、
オコエ瑠偉以来の高卒ルーキーの開幕一軍を勝ち取れるか。楽天ではいまだ、開幕スタメンを勝ち取った高卒ルーキーはいない。福島県生まれ、仙台育英高出身、167センチの小さな東北のスターが、楽天の球史に名を刻めるか。チャンスは十分に残っている。
文=阿部ちはる 写真=小山真司