今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『プロ野球は低調か?~テレビの影響とヒーロー不足』
今回は『1960年7月13日増大号』。定価は増ページで10円上がって40円だ。ペナントレースは6月20日現在でセが1位
中日、2位
巨人、パが同率1位で南海、大毎となっている。いずれも波乱含みだ。
巻頭特集は『優勝へ!声なき声をきけ』。ただ、声なき声と言っても、一般読者の話を聞くという企画ではなく、評論家たち。
苅田久徳、
楠安夫、
児玉利一、
大島信雄が座談会を行い、セ、パの優勝争いを分析している。
タイトルに違和感を覚えながら読んでいくと、文中にタイトルに引用された言葉があった。抜粋する。大毎の新監督・
西本幸雄についてのやり取りである。
大島 大毎の選手は一軍、二軍を問わず猛烈に練習しますね。それは西本がさせたものなら立派だ。他のチームは二軍の練習など、ともすればだらけるのによくやっている。これは選手の実力差をなくして、チーム力を厚くしていると思うね。
楠 西本作戦、用兵については、一方では批判の的になるものがあるけど、西本監督の功罪というと、功のほうが大きいように思うね。ただ一部、その試合試合の部分的な流れを見たときに、われわれの納得いかない場面も二、三見られるけどね。
児玉 監督から崩れていくということはないだろうね。
楠 西本さんという人はそうとう信念の人だと思うね。そうとう我慢強くもあるし、ねばりもある人ですよ。
大島 声なき声に耳を傾けるか。
かなり西本監督の評判は高くなっていた。
少し現在に時計の針を戻す。地上波中継が激減し、その影響について、ざまざまに語られているが、この時代にも“テレビ問題”はあったようだ。
『プロ野球は低調か?~テレビの影響とヒーロー不足』の記事で、テレビの普及による観客動員への影響は「大体2割、悪天候の場合は4割」とある。この年、やや観客動員が陰りを見せ、それはテレビ中継の普及により、わざわざ球場まで足を運ぶことが減っているのでは、というのが論旨だ。
ただ、実際には、西鉄を筆頭にパ球団の観客動員が前年に比べ鈍り、セはさほど変化がない。むしろテレビ普及により、常に中継される巨人への一極集中が強まる気配を見せ始めたのでは、とも思うが、いかがだろう。
ニュースストーリーでは『ホームランを打つバット』として、石井順一氏が考案した熱処理に加え、樹脂を流し込み、ボールをよく“弾く”ようにした圧縮バットがひそかに普及し始めているという話もあった。
前回、駒沢のヤジの記事を紹介したが、この号には『川崎球場のヤジ合戦』と続編がある。面白いものもあったが、文字にしてみたら臨場感が伝わらず、陳腐に見えたので、今回は削除した。
以下は宣伝です。しばらく、まったく同じ文を掲載します。
現在、週刊ベースボール60周年企画として「週べでつづる12球団史」を制作中。第1弾は3月14日発売予定の巨人編です。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM