プロ野球史を彩ってきた数多くの名選手たち。生まれた世代ごとに週刊ベースボールONLIN編集部がベストナインを選定して、“史上最強世代”を追いかけてみる。 竜のレジェンドが軸に
15歳で入団テストを受けて投手として名古屋(のちの中日)へ入団し、1937年の秋季に16歳と4日で公式戦に初登板、戦後は打者として本塁打を量産した西沢道夫の世代だ。
投手としてはメジャーにも例がない延長28回の激闘を完投し、打者としては52年に首位打者と打点王の打撃2冠。シーズン20勝と40本塁打に到達した史上唯一の選手だ。もちろん、世代の中でも西沢が最初のプロ野球選手。軸となるのも西沢だ。
【年生まれのベストナイン】(1921年4月2日~22年4月1日生まれ)
投手
川崎徳次(西鉄ほか)
捕手
土井垣武(
阪神ほか)
一塁手 西沢道夫(中日ほか)
二塁手
坂本茂(
巨人ほか)
三塁手
手塚明治(巨人ほか)
遊撃手
山本静雄(近鉄ほか)
外野手
古川清蔵(阪急ほか)
増田卓(大映)
多田文久三(巨人ほか)
指名打者
武宮敏明(巨人)
驚異の完投能力を誇った西沢だが、ここでは一塁に回ってもらう。この世代、バッテリーは多彩だが、打線で本塁打を期待できるのは西沢ぐらいだ。西沢が投手時代の名古屋でチームメートだった古川清蔵は背走キャッチの名手として知られる強肩外野手で、42年から2年連続で本塁打王に輝いているが、8本塁打、4本塁打でのタイトルホルダー。通算370盗塁の俊足でリードオフマンとして打線を引っ張る役割が最適だろう。古川が出塁して、かき回し、西沢が還すのが数少ない得点パターンとなりそうだ。
古川は前述した延長28回の試合でマスクをかぶってリードしているが、この世代には“ダイナマイト打線”の一角を担った強肩強打の土井垣武もいるため、やはり古川は外野だろう。土井垣は右打ちを得意とする勝負強い巧打者で、西沢に続くクリーンアップの役割が期待できる。多田文久三も頭脳派捕手で、外野は32試合しか経験がないが、投手としても通算162試合に登板、4年連続2ケタ勝利も挙げた野球巧者。層の薄さを個性的な捕手がフル回転してカバーするしかないのが、この世代の特徴であり、弱点でもある。
“生え抜き”の外野手は増田卓のみ。28歳でのプロ入りだったが、1年目から俊足を生かした正中堅手として活躍。古川と益田で経験の浅い多田をフォローする形となりそうだ。
3人の20勝投手

西鉄・川崎徳次
内野は二塁に坂本茂(埴留)と山本静雄が重なる。ともに近鉄の創設に参加して坂本が一塁、山本が二塁を守ったが、一塁には西沢がおり、山本は遊撃の経験もあるため、その並びのまま二遊間へ。手塚明治(耀朗)は2リーグ分立の50年に巨人で正三塁手を務め、54年には四番にも座ったことがある。
この世代は20勝投手で三本柱を形成できる。エースとなるのは川崎徳次だ。南海でキャリアをスタートさせ、巨人と西鉄で黄金時代に貢献。2度の最多勝、53年には最優秀防御率との投手2冠にも輝いた右腕だ。
同じく右腕では“ミスター・タイガース”
藤村富美男の弟でもある
藤村隆男もいる。タイガースでプロ入り、兄と違って阪神ひと筋ではなかったが、強気のピッチングで52年の自己最多25勝を含む7度の2ケタ勝利。勝率が高いのも魅力だ。
もう1人は貴重な左腕の
大島信雄。松竹の結成に29歳で参加すると、いきなり20勝を挙げる活躍でチームをセ・リーグの初代王者へと導いて、歴代最年長で新人王に輝いた。この三本柱で、いかに貴重な得点を守り抜けるかがポイントだろう。
写真=BBM