
試合後、握手を交わす岩隈(右)と田尾安志監督
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は3月26日だ。
2004年に大騒動となった球界再編問題。その末に誕生したのが、
楽天だ。当時、時代の最先端にあったIT企業の楽天のイメージと、50年ぶりの新規参入というフレッシュ感、プロ野球と縁が薄かった東北の地での地域密着のさまざまな取り組み……グラウンド外の話題は豊富だった。
ただ、肝心のチームの実力面は……というと、評論家諸氏の順位予想はほぼ最下位。それどころか「いくらなんでも100敗はしないだろう」というものだった。
2005年3月26日、
ロッテ戦(千葉マリン)。楽天の初代エースとして開幕戦のマウンドに立ったのが、近鉄最後のエースでもある
岩隈久志だった。オープン戦からは中12日。移動疲れで疲労が蓄積し、体調的には不安を抱えてのマウンドだった。
それでも自分が立ったマウンドの意味は誰よりも分かっていた。140キロ台後半の速球を軸にロッテ打線を抑え込む。終盤はさすがに疲れを隠せず、8回には体のバランスを崩して転倒する場面もあったが、「粘りの投球ができたし、野手のみなさんのプレーに助けられました」と1失点完投。野手陣もエースの力投に応え、3得点を挙げ、3対1で楽天が初陣を白星で飾った。
初代指揮官・田尾安志監督の目には涙が浮かんでいた。
「みんなの喜んでくれる顔がうれしくてね。選手と握手をするときに、それぞれいろいろ感じているんだな、と、その人の思いを考えると、ちょっときてしまった感じだね。この勝利は選手にとって大きな勇気になる」
ただ、翌日は同じくロッテ相手に0対26の記録的大敗。波乱のシーズンが幕を開けた。
写真=BBM