長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 「俺は命がけで投げとるんや」
情熱のエース、阪神・村山実の伝説のひとつだ。
1963年8月11日、
巨人とのダブルヘッダーの第2試合(後楽園)。7回裏走者二。三塁でリリーフした阪神の村山(当時は昌史)は、2-2から自信を持って投げた1球の判定に激高。「あれが本当にボールか。ちゃんと見てくれ」と言いながら近づいていく。
国友球審は、すぐ村山に暴言で退場を宣告したが、顔を真っ赤にした村山は「なぜ退場なんだ」と、あらためて迫った。
そして、もみ合うなかで、国友球審の手が村山のアゴを殴るように入った。ここで村山の感情は一気にわき立ち、涙がボロボロとあふれてきた。
ベンチから飛び出した捕手の
山本哲也が抱きかかえるようにして必死に止めたが、何度も何度も国友球審に近づいていき、「俺は命がけで投げとるんや。あんたも命がけでやってくれ」と号泣しながら抗議した。
写真=BBM