今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『巨人に隠し投手がいる』
今回は『1961年7月3日増大号』。定価は10円上がって40円だ。後ろグラビアと本文の記事で、6月20日、後楽園球場の
中日戦で完全試合を達成した国鉄・
森滝義巳に多くが割かれる。史上7人目の偉業だ。森滝はアンダースローの投手でシンカーとカーブが武器だった。
巻頭は毎年恒例の企画のようになっている『
巨人に隠し投手がいる』だ。中日、国鉄と優勝争いをしていた
川上哲治監督の巨人だが、この時点では投手陣に不安を抱えていた。
何人か噂があったが、1人はパイレーツでメジャー経験があったチャールズ・ダグラス。これは写真入りでの紹介だった。また、二軍組の
高橋明、
高橋栄一郎らの名前も挙がっていたが、高橋明は63年にブレーク、高橋栄一郎は巨人で芽が出ず、63年移籍先の南海で11勝を挙げた。引退後は山形県新庄市で市長になった男だ。
中途入団での補強については、
別所毅彦コーチは「新人投手を入れることはよくない。しかもそれが外人投手だなんて、そんなバカなことは考えてみませんわ」と全否定していた。
だが、実際にはこの年、巨人は“秘密兵器”のおかげでVをつかんだ。究極のリアリストである川上監督、巨人伝統主義、ある意味、ロマンチストに別所コーチは合うはずもなかったのかもしれない。
好調の中日を支えるのは、連投連投の新人・
権藤博。『
森徹と権藤博のうちがわ』という記事では、また
濃人貴実監督が「権藤酷使」の声に猛反発している。
──権藤投手は連投で疲れていませんか。
「みんなマウンドに登った人だけを見て、連投とか言ってるけど、ブルペンにいる人も1日最低50球も投げる。そういう人は連投じゃないんですか。権藤は2回くらいのリリーフなら大体25球ですよ。権藤は疲れていませんよ」
──肩が痛いと書かれていましたが。
「本当は肩など痛くなかった。たまたま東京に来て、マッサージにかかったら巨人と関係深いマッサージ師で、権藤の肩は疲れて痛んでいるといった。それを新聞が書いた。これは謀略ですよ。権藤は肩が痛いというので、打者は最初から権藤をのんでかかる。まったくおかしなことですよ」
ただ、実際、権藤に聞くと「ちょっと痛かったですね。雨が降って5日ぐらい休んだら痛くなくなった。どうやら疲れのせいですね」とあっさり。
濃人監督は意地になっていたのか。
以下、宣伝。
週べ60年記念シリーズ『巨人編』『
日本ハム編』が好評発売中です。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM