長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 ファンの熱意で……

球場では市民による募金活動も
市民球団を目指し、大企業のバックがなかったことで
広島カープは長く資金難に苦しんだ。最大のピンチが51年のシーズン前だった。選手への給料遅配の問題もあり、連盟から解散か大洋との合併を迫られた。
やむなく合併に向けて動き出したが、その話が報道陣にもれ、3月14日、地元のラジオのニュースで流れたことで状況が一変する。人々が県庁に、市役所に、商工会議所に、新聞社に詰めかけ、涙ながらに「カープをつぶすな。われわれもできる限りのことをする」と訴えた。広島はこのとき確かにひとつになった。
選手たちも動いた。16日から甲子園で大会があったが、汽車賃がなく不参加となるはずだった。だが、選手たちは「歩いていけばいい」と出発の準備を始めた。結局、後援者やファンのカンパで汽車に乗ることができ、連盟も広島の熱意に打たれ、存続にOKを出した。
写真=BBM