長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 原の入団で劇的変化

左から原、江川
1979年、大騒動の末、
巨人入りした
江川卓。マスコミを敵にし、チームメートからも距離を置かれる存在だった。それが劇的に変わったのが81年、大学時代から仲の良かった
原辰徳が入団してからだ。自主トレでは2人で高校生のようにじゃれ合い、ふだんから笑顔が増え、話もジョークが次々と出るようになった。
「江川さんに、お前はかわいそうだな、とよく言われていましたね。自分はマイナスからのスタートでイメージが悪かったから、いまちょっと笑っただけで『江川が笑った』と騒いでくれる。お前はそうはいかないだろうからなって」(原)
ある意味、自分の立ち位置を悲しいくらい正確に理解していたことが分かる。球宴8連続奪三振の後、最後にカーブを投げたり、1本のホームランで引退を決めたりと、このあまりの聡明さが江川の強さであり、弱さであったのかもしれない。
写真=BBM