長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 ONがいたから……
川上監督(77)と厚い信頼関係で結ばれていた土井正三
頭脳的な二塁守備と、つなぎに徹したバッティング。土井正三は
巨人V9に欠くことのできない名バイプレーヤーだった。生涯5度、リーグ最多をマークした送りバントは代名詞ともなっている。ただ、本来は人の陰で満足する男ではない。
「自由に打てば、もっといい個人成績は出せたと思います。ただ、次がON(
王貞治、
長嶋茂雄)ですからね。あの2人だからこそ、僕らも割り切ってチームバッティングに徹することができたんです」
土井の結婚式での
川上哲治監督のスピーチもある意味、すごかった。
「土井君にはONのお膳立てになってもらいます。これからも徹底してワキ役になってほしい。どんないい役者を主役にしても、ワキ役がいなきゃダメなんです」
土井は「結婚式のときくらいは主役になれ、でいいのにね。仲間たちがびっくりしていました」と苦笑いしていた。
写真=BBM