読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。 Q.小学5年生です。家でタオルを持ってシャドーピッチングをしています。どれくらいの回数をすれば、ピッチングが上達しますか。また、気を付けることを教えてください。(静岡県・11歳)
A.シャドーピッチングはあくまえもメニューの1つ。アームスピードを速め、フォームを固めるためのもの。

イラスト=横山英史
まず、ただ数をこなせば上達するものではないことを分かっておいてください。また、ピッチングを上達させるには、1つのメニュー(この場合はシャドーピッチング)だけではなく、さまざまなメニューをこなし、総合的にレベルアップを図る中で、長所を伸ばしたり、苦手な部分を克服したりする必要があります。そういう意味では、シャドーピッチングも上達のための1つのメニューで、そもそもどんな目的で行う練習なのか、理解しておくことも必要でしょう。
このメニューの目的は、アーム(腕)のスイングスピード(つまり、腕の振りのスピード)を上げることにあります。実際にボールを握って投げてもいいのですが、それでは肩やヒジに掛かる負担が大きいため、ボールよりも軽いタオルに握り替えて取り入れる選手が多いのです。
とはいえ、シャドーピッチングでも腕を振ることに違いはないですから、消耗しないという考えはウソでしょう。やり過ぎはケガの元になりますし、そもそも正しいフォームで行わないといくらやっても意味がないので注意が必要です。
シャドーピッチングのもう1つの目的が、正しいフォーム、理想のフォームを身に付けることにあります。鏡を見ながらシャドーピッチングをする選手を見たことがあると思いますが、あれは各々が課題を持って、手の位置や角度、下半身の使い方などをチェックしているのです。
いまであれば、携帯(スマホ)などで撮影し、すぐにチェックするのもいいでしょう。プロでも個人練習でシャドーピッチングをする選手もいますし、球数を厳しく制限されるメジャーでも、スプリングトレーニングの際の全体練習終了後にタオルを振っている選手を目にしました。万国共通の練習方法というわけですね。
なお、練習終了後のトリートメントも忘れないでください。肩、ヒジを冷やすとか、ストレッチをよくして、お風呂などで血流をよくするなど、気を使うべきですね。
自主練習ということでいえば、私は質問の方くらいの年齢のころはカベ当てをよくしていました。カベに的を描き、そこに当てる練習はそのまま制球力の向上につながったと思います。質問の方もいろいろ試してみてください。
●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に
楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
写真=BBM