
チームの勝ち頭として奮闘する大瀬良
気迫と頼もしさを感じた。6月8日の
楽天戦(マツダ
広島)に先発した
大瀬良大地は、初回、3回のピンチを味方の好守にも助けられ切り抜けると、その後は楽天打線に的を絞らせず。「ストライクで勝負する意識で、粘り強く投げられた」。113球を投げ7回無失点で、リーグトップの9勝目を挙げた。先日、5月の月間MVPを初めて受賞し、この日の勝利で目下7連勝中と、右腕は勢いに乗っている。
今季、広島の先発陣はピリッとしない。ケガで離脱中の
野村祐輔に、
薮田和樹や
中村祐太は制球に苦しみ二軍調整を余儀なくされた。先発陣の防御率4.18はリーグ5位(6月8日現在)。その中で大瀬良は安定感を見せ、首位を走るチームをけん引している。
フォームの修正や直球の威力向上、カットボールをはじめとする変化球に磨きをかけて今季に挑んでいる大瀬良だが、進化する技術とは反対に変わらない思いがある。先発に対するこだわりだ。
「小さいころからずっと先発でやってきましたし、まっさらなマウンドで投げたいという気持ちがある。『試合の責任の7、8割は先発にある』と教えられてきて、その責任感を持ってマウンドに立ちたいという思いもあります」
ルーキーイヤーの2014年から2ケタ勝利をマークし新人王に輝いた。しかし、15、16年は先発で力を見せられず、チーム事情もあり中継ぎに転向。それでもずっと心には先発への強い思いがあった。むしろ中継ぎを経験したことで、先発として「救援を助けられるようなピッチングしなければいけない」と気づかされた。リベンジを期した17年は最後まで先発ローテーションを守り、3年ぶりの2ケタ勝利で規定投球回にも到達。本来自分がいるべき場所へ帰ってきた。
もう悔しい思いはしたくない。「先発」で輝き続け、そしてチームの柱へ――。日に日に頼もしさを増していく大瀬良の顔には自信も浮かぶ。目前に迫る2年連続の2ケタ勝利、キャリアハイの更新は通過点。これからも自分の居場所で腕を振る。
文=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭