
楽天・栗原コーチ(左)、平石監督代行
低迷が続いて最下位に沈んでいる楽天は、得点機での打撃が特に悪かった。5月から一軍で指導をする
栗原健太打撃コーチはその要因について「打ちたい、打ちたいという気持ちが出過ぎて、焦ってしまって、自分が狙っていない球にも飛びついてしまっている」と分析する。その上で「気持ちは分かるんですけどね。ただもう少し、どっしりしてほしい」と、その問題に向き合っていた。
そんな栗原コーチが重要だと話すのが初球の入り方だ。
「バッテリーからすれば初球の入り方って、すごく苦労するんですよ。早く追い込みたいからやっぱりストライクが取りたい。だから、意外と初球ほど甘い球が来るんだと思いながら、『甘いボール、打てるゾーンにボールが来たらいくぞ』という集中力を持たないといけない。その1球で仕留めるんだ、という気持ちでいくしかないんです」と話す。失投が少ない一軍クラスの投手とはそこが勝負になる。
さらに栗原コーチは現役時代、球種ではなく、ゾーンでボールを待っていたという。
「外角低めの難しい球なんて待たないでしょ? だから自分が打てるゾーンに来たボールを打つことに集中すればいい」
そこにはバッテリーとの駆け引きによって導き出された持論がある。
「バッターが配球を考えてくれたらキャッチャーは楽なんですよ。その時点で受けに回っているわけです。ピッチャーが投げてからバッターまでは1秒もないわけですから、考えた時点で遅れてしまう。そしてどんどん崩れていくわけですよ」
現役時代には
広島で四番を務めた栗原コーチ。重圧と闘いながら結果にこだわってきたからこその打撃論だ。酸いも甘いも知り尽くしたからこそ、「チャンスのときこそネガティブじゃダメなんですよ」と笑顔を見せ、「ヒーローになれるチャンスなんだから」と積極的な思考を勧める。
ここ数試合、打線が活発になってきたが、2009年には日本代表としてWBCに出場している熱きスラッガーの精神力を学び、楽天ナインたちは勝負強さを持続することができるか。得点機では特に初球へのアプローチに注目だ。
文=阿部ちはる 写真=小倉直樹