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プロ野球仰天伝説

史上唯一3度のサイクルを達成したのは引退表明していたローズ/プロ野球仰天伝説199

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

20対4と大勝した試合で達成


横浜・ローズ


 史上唯一、3度のサイクル安打を達成しているのが横浜のロバート・ローズだ。

 1999年6月30日の広島戦(富山)。横浜が25安打を放ち、20対4で大勝した試合だが、四番のローズはまず2回に左中間へ二塁打。3回は四球だったが、5回に中前打と右越え三塁打、6回に左中間へ本塁打を放って、95年5月2日の中日戦、97年4月29日のヤクルト戦に次ぐ3度目のサイクル安打を達成した。

 実はこの年、ローズは引退宣言をしていた。

「もうやるだけのことはやった。今年で野球をやめる。メジャーで野球をやることも、他の球団に行くこともない。その意思は変わらない。今後は家族と一緒に楽しく過ごすよ」

 来日6年目を迎えていたローズ。シーズンが終わると真っ先に帰国し、家族と過ごす時間を大切にしてきたが、前年の日本一が大きな区切りとなっていたようだ。常に個人成績よりもチームの勝利を願ってきた助っ人にとって、チームの日本一で、自分の使命は終えたという思いもあったのだろう。

 しかし、このサイクルヒットによって、引退の2文字を残留に変える可能性をもたらした。

 記録達成から数日後、ローズがこう漏らした。

「ワイフに言われたよ。『野球場で笑っているあなたを初めて見たわ。だから、まだ野球をやっていなさいよ』って」。

 ミッシェル夫人が引退撤回を勧めたという。ローズ自身も「サイクルを打ったとき、本当に楽しいと思えたよ。最近、そういうことがないなと思っていたからね」

 周囲からもやめないでコールが沸き起こっていた。

「決意はそう簡単に変わらない」と言い続けたが……最終的に翌年も現役を続行した。

写真=BBM
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