
その才能に疑いの余地はないだけに、いまはしっかりと土台作りに励んでいる清宮
7月9日の
日本ハム対
ソフトバンク戦の試合前練習、東京ドームには鎌ケ谷から合流したあの男の姿があった。
清宮幸太郎。ゴールデンルーキーは真っ黒に日焼けし、精悍さも増していた。
栗山英樹監督はかねてから「一軍でも、二軍でもベンチに座っていてはいけない選手」と清宮の育成方針を語ってきたが、今回の昇格は「ちょっと直接話をしたかったし、一度見たかった部分もあっただけ。最初からこの(東京ドームでの)2連戦は考えていた場所」とあくまでも2日間限定の昇格だということを説明した。
2連戦ともにベンチスタートとなり、代打で9日に試合は空振り三振、翌10日はチャンスで一塁ゴロに終わった。その結果にも指揮官は一喜一憂することなく、淡々と清宮の姿を見守っていた。その背景には綿密に練られた栗山監督と球団の育成プランがある。どれだけイースタン・リーグでホームランを打とうが、次に一軍に呼ぶのは「スタメンで出られるだけの真の力をつけたとき」。その日のために周囲の一軍待望論などどこ吹く風で、次代を担う大器を大きく開花させるために信念を貫き通している。
日本ハムの根幹でもある「スカウティング」と「育成」。現在一軍で主力を担っている
中田翔、
西川遥輝、
近藤健介、
中島卓也、
清水優心らの高卒入団組もまずは鎌ケ谷で土台作りから行い、その才能を育み、磨いてきた。目の前の結果ではなく、もっと先の未来を見据えて。12球団で唯一育成選手を取らないのも、ファームにいる選手に1試合でも、1打席でも、1イニングでも多くの出場のチャンスを与えるため。その環境から多くの若手選手がスターダムへと駆け上がってきた。
清宮のプレーを一軍で毎試合見られる日はもう少し先になりそうだが、それでもファームでその成長の過程、発展途上の19歳の原石を見守る楽しみもある。
明日(7月12日)にはフレッシュオールスター(はるか夢球場)も開催され、清宮もイースタン・リーグ選抜の一員として出場。青森のファンの度肝を抜く豪快なアーチは飛び出すか。スター選手への登竜門とも言える舞台で、現在進行形の清宮の姿をしっかりと目に焼き付けたい。
文=松井進作 写真=高原由佳