いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? 草創期から続くエースの系譜
出雲地域だけでなく、離島の隠岐でも蕎麦が有名。宍道湖には四季にわたって“七珍”と呼ばれる珍味があり、それに舌鼓を打ちつつ酒を飲み過ぎても心配はない。七珍のひとつ、シジミの漁獲量は日本一を争う。一般的に旧暦10月は神無月と言われるが、島根県の出雲地域では“神有月”。創建は紀元前にさかのぼるという出雲大社に、日本中の神々が集うとされているためだ。
そんな島根の県民性は、働き者で真面目、素朴で控えめだといい、“神々の故郷”というのにも不思議な説得力がある。島根県出身のプロ野球選手は、打線には「素朴で控えめ」な印象があるが、投手陣は「働き者で真面目」、言い換えれば、役割を問わず投げまくった好投手の存在が光る。
【島根ドリームチーム】
一(二)
糸原健斗(
阪神)★
二(中)
佐々木常助(金鯱)
三(遊)
梶谷隆幸(
DeNA)★
四(捕)
梨田昌孝(近鉄)
五(一)
清水秀雄(
中日ほか)
六(右)
伊藤光四郎(西鉄ほか)
七(三)
清水雅治(中日ほか)
八(左)
竹下光郎(近鉄ほか)
九(投)大野豊(広島)
(★は現役)
プロ野球とのかかわりは古く、その歴史が始まった1936年には
巨人へ外野手の
山本栄一郎、阪急へ投手の
北井正雄を送り込んでいる。北井は2年目の37年シーズン途中に急死したが、「東の沢村(栄治。巨人)、西の北井」と並び称され、存命なら阪急の歴史が変わっていた右腕だ。
その後も投手の優勢は続く。そんな島根県のエースは大野豊だろう。テスト入団も1年目は防御率135.00、そこから22年の長きにわたって広島を支え続けて最優秀防御率2度、通算100勝&100セーブを残した左の鉄腕だ。
エースの座に迫るのが、やはり左腕で迎えた2018年にプロ16年目となる現役の
和田毅(
ソフトバンク)で、メジャーを経て古巣へ復帰した16年に最多勝。スマートな風貌からはイメージしにくいが、今や鉄腕といえる存在だろう。
1リーグ時代に活躍した清水秀雄も左腕で、一塁手との“二刀流”。ここでも五番打者として一塁に入ったが、薄化粧をして毎晩のように夜の街へ繰り出して“夜の帝王”とも呼ばれるなど、選手としても県民性でも“異端児”だ。
二塁には現役から、阪神でリードオフマンに定着しつつある糸原健斗を抜擢。二遊間を組むのも現役の梶谷隆幸で、若手時代の遊撃手として三番打者を担う。
二番で挟まる佐々木常助は金鯱の正中堅手で38年秋の盗塁王。ユーティリティーの清水雅治も走塁は巧みで、ここでは三塁に入った。低迷期の西鉄を右翼手として支えた伊藤光四郎が六番で、七番に清水が続き、八番は60年代前半の近鉄で正捕手を務めた竹下光郎。内野や外野を守りながら出番をうかがった苦労人が左翼を守る。
盤石のバッテリー

近鉄・梨田昌孝
のちに近鉄の司令塔を継承したのが四番に入った“コンニャク打法”の梨田昌孝で、パ・リーグ史上最強とも評された強肩の持ち主が攻守の要に座る。
バッテリーは盤石だ。投手陣は右腕も充実していて、大野と同様に100勝100セーブを達成した
佐々岡真司(広島)もエースに迫る存在。スターターでは本格派の
山内新一(南海ほか)やサブマリンの
三沢淳(中日ほか)、リリーバーでは
福間納(阪神ほか)も。大野や佐々岡はクローザーにも適性があるので、長期戦でも臨機応変に戦い続けることができそうだ。
打線が機動力を駆使して貴重な1点を挙げるタイプなだけに、バッテリーの奮闘が勝負のカギを握る。
写真=BBM