「ベースボールは自分の生き方そのもの」
あまりにも長い野球人生。フィリーズ-インディアンス-レンジャーズ-ホワイトソックス-ロッテ95-インディアンス-ブリュワーズ-ロッテ98-デビルレイズ-韓国/サムスン-ブレーブス-メッツ-ブレーブス……。スペースはほぼ経歴で埋まってしまった。
現在発売中の週刊ベースボールは外国人選手を特集。その目玉企画として今まで日本プロ野球に在籍した総勢1190人の外国人選手の名鑑を掲載している。メジャー・リーグで2586安打をマークし、95、98年、ロッテに在籍した
フリオ・フランコ。その姿勢でロッテの選手の意識を変えた男だ。冒頭のようにその野球人生をたどるだけで文字数を食ってしまい、寸評が入る余地がなかったが、もし、書くとしたら「真のプロフェッショナル」とでもなるか。
その一端に触れたのが3年前だった。BCリーグの石川ミリオンスターズに選手兼任監督として在籍していたフランコに話を聞いたが、当時56歳でも現役としてユニフォームを着続けている男はまさに匠のプロフェッショナル論を持っていた。話の内容を再現してみよう。
――あなたはお酒を飲まないし、タバコも吸わない。徹底した自己管理をしていることでも知られていますが、それも野球のため?
フランコ それはベースボールのためというより、自分自身の人生を考えた結果だ。人生をきちんとコントロールするためには、どのようにすべきか? そうすると、例えばパーティーに行くことを避ける、という選択になるね。
――そういった姿勢も非常にプロフェッショナルに映りますが、あなたにとってプロとは?
フランコ 簡単に言えばベースボールチームと契約すればプロフェッショナルになれる。ただ、当然それだけではダメだ。本当のプロフェッショナルは誰よりも早くスタジアムに来て、誰よりも遅く家路に就く。そこで、自らのレベルアップに励む。さらに自分の成績を気にせずに、チームの勝利だけを考えてプレーする。例えば打者でいえばランナーをしっかりと進める打撃をすることだ。そして、さらに言えば本当にベースボールを愛することだ。
――日本のレジェンド、
長嶋茂雄巨人終身名誉監督は「野球とは人生そのものだ」と語っています。
フランコ オーッ、ナガシマサン。それにはワタシも同感だ。“Baseball is my lifestyle”。ベースボールは自分の生き方そのものなんだ。愛しているからこそ、できるだけ長くプレーしたい。スタジアムに来て練習するのも、ゲームをするのも大好き。アーキテクト(建築家)もドクター(医者)は70歳になっても設計をしたり、手術をしたりするだろ? それと同様だと思う。ワタシも愛していることに、いつまでもかかわっていたいんだ。
「ワタシにはベースボールの血が流れている」
――あなたはなぜ、そこまで野球を愛せるのでしょうか?
フランコ それは生まれ持ったものだろう。この世に生を受けた瞬間から、ベースボールを愛していた。ワタシにはベースボールの血が流れているんだ。スプリングトレーニングが始まって、きれいな芝生の上でバットを振るだけでハッピーになるし、開幕戦のセレモニーでチームメートがライン上に並んだときの興奮。そういったことは誰でも経験できるわけではない。もちろん、ワタシがそれを味わえるのは神様から与えられた体、能力があったことが大きい。
――野球の魅力とは?
フランコ 例えばオフィスで仕事をしている人でも、普通に生活している人でも緊張する場面はあって、それは好ましくないことの方が多いだろう。だが、ベースボールプレーヤーの場合、ゲームでそのような場面に直面したとき、それを乗り越えると自分の能力を引き上げてくれる。自分の限界を超えるプレー。そういう瞬間があることが、ワタシがベースボールを愛している要因の一つだ。
野球こそが理想の自分へと高める最大のモチベーションとなるとも語っていたフランコ。想像を絶する緊張感の中でプレーすることに喜びを感じ、そこで結果を出したいと思うことが自分を突き動かす原動力になっていたという。
まさに、プロフェッショナルの言葉の連続だった。
文=小林光男 写真=BBM