
バットを一握り余して持つドラフト3位ルーキー・福田。コンパクトな打撃と果敢走塁な走塁を見せるが、本人に意識は……
実力を発揮するため、準備は欠かさない。ナイター時の球場入りは午前10時30分。「いろいろ、やりたいことがあるんです」と、チームで1、2の早さで働き場に顔を出す
福田周平は、理由を語る。
守備、走塁、打撃と、自らの技術練習に加え、「グラウンドに出る前にも、やりたいことがある」と、体のケアに相手先発投手の映像確認はルーティンに。だから「なるべく早く行きたいんです」。体と心をしっかり整え日々、勝負に挑んでいる。
心技体の中でも“心”を重視しているのは、会話を交わせば伝わってくる。打席で意識するのは「気持ちを安定させること。そのために、深呼吸をして、リ
ラックスして。あとは打つと決めたボールに対して、振り切るだけです」。
プロ1年目の今季、開幕当初は「投手のスピードに戸惑った」と差し込まれる感覚を覚えたそうだが、その理由も、心の面だった。
「早くヒットを欲しがっていた。その時点でメンタル面で崩れていたんです」
そうした体験からも“自分を保つ”ことの大事さを痛感。だから平常心でいる努力は怠らない。連戦が続くプロでは、疲れを翌日に持ち越さないことを第一に考え、「睡眠時間をできるだけ長く、食事もしっかり摂る」ことは当たり前。入寮時には「良いマットレスを買ってきました」と、「プロに入る前から、体力は大事と考えていた」ことは、行動からも見て取れる。
バットを短く持ち、コンパクトに逆方向に飛ばす。走塁では果敢なヘッドスライディングで次塁を奪う。技術面では躍動感あるプレーを見せるが、「まだ僕は体が弱いので。体を強くしてから」と、技術向上は先のこと。バットを短く持つ理由も「今の僕の体の強さなら、これがベスト」と、身の丈に応じたスイングするためだ。
当然、今はシーズンに集中しているが、来季に向けた思いも見え隠れする。筋力、体のバランス、体幹。すべてにおいて、『体が弱い』と言う福田は、「オフにしっかりトレーニングをしようと考えている」という。その先に――。
「バットを長くして、今のまま一握り余して持つか、めいっぱい長く持つか。そこは、これから次第ですが、長く持てるように、体を強くしたい」
心を整え、体を鍛え上げ、その先の技術向上へ。プロ1年目に何を得て、それを来季以降にどう生かすか。シーズンは、まだ途中だが、福田の思考は“これから”を楽しみにさせてくれる。
文=鶴田成秀 写真=毛受亮介