
体を目いっぱい使っての熱投
100回の記念大会を迎えた夏の甲子園。週べオンラインでも甲子園を沸かせた伝説のヒーローたちを紹介していこう。
ちぎっては投げる速球、雄叫びをあげながらのガッツポーズ。細い目がなくなるような笑顔で機関銃のようにしゃべるヒーローインタビュー……。
大越基は、当時の東北の高校球児のイメージを覆したと言えるかもしれない。
東北、仙台育英を率いて一時代を築いた竹田利秋監督が“大旗の白河越え”の夢に一番近づいたのが、この大越を擁した1989年夏だった。
1回戦で鹿児島商工(鹿児島)を7対4で破り、2回戦は京都西(京都)相手に1安打完封勝利。3回戦は、同じ東北の弘前工(青森)との戦いになったが、1対1の8回裏に自らソロ本塁打を放ち、2対1で逃げ切った。
圧巻は
元木大介、
種田仁らで優勝候補筆頭だった上宮(大阪)を10対2で下した準々決勝だ。上宮とは春のセンバツでも準々決勝で対戦し、元木の逆転本塁打で敗れていた。
大越は、大会前には「元木に勝って優勝したい」と公言。試合終盤の集中打など18安打でものにした会心のリベンジだった。
準決勝も尽誠学園(香川)に延長の末、3対2で競り勝ち、決勝打は大越だった。これで東北勢4度目、宮城県勢として初の決勝進出だ。
最後は、帝京(東京)が立ちはだかる。ヒジ痛を我慢し力投した大越だが、0対0の延長10回に力尽き、2点を奪われ、準優勝に終わった。
試合後、「自分としては満点の投球」と淡々としていた大越だが、閉会式の後、竹田監督と握手した途端、大粒の涙が流れた。