卒業後の進路の決め手に

佐賀商のバトン部は応援だけでなく、生徒の模範であり続けることを活動指針としている
アルプススタンドを盛り上げるチアリーダー。佐賀商バトン部部長の平野夏菜さん(3年)にとって、卒業後の進路の決め手となった活動期間であった。
「私たちが応援することで、笑顔になっていただける方をよく見かけます。将来は人を笑顔にできる仕事がしたいと考えています」
野球応援のほか、サッカー、バレーボールの会場へ足を運び、地域の祭りのパレードに参加することもある。競技者として大会に出場することはなく、サポートが専門の部活動だ。
「応援している、という気持ちは一切ありません。強い部活でないと、応援する機会さえありません。応援させていただいている感謝の気持ちを、忘れないようにしています」
37人(3年生13人、2年生16人、1年生8人)を束ねるにあたって、最も注意しているのが謙虚な姿勢だ。
「私たちがしっかりしないと、野球部にも迷惑がかかる。自覚ある行動を促しています」
学校生活においても常に襟を正して、模範生となるべく、努力を続けている。
夏菜さんとは、灼熱の季節にピッタリの名前だが、実は11月生まれだ。「由来? 何かあったかもしれませんが……」と苦笑いを浮かべるも「最高の夏を過ごせて、良い名前をつけてもらったと思っています」。高岡商との1回戦は第1試合。早朝から厳しい直射日光を受けながらも、野球部のために懸命に踊り続けた。ゲームには惜敗したものの、アルプスを笑顔一色にしていた。野球がオフシーズンの冬場も、週5日、猛練習を継続してきた成果を甲子園で披露した。
商業科に在籍する平野さんは「全商簿記1級」の資格を取得するなど、学業面でも3年間、力を注いできた。専門学校を経て、ブライダル系の仕事に就くのが目標。人生の門出を、最高の笑顔で送り出す仕事に興味を抱いている。平野さんにとって“天職”となりそうだ。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎