いよいよ100回目の夏の甲子園が始まった。『週刊ベースボール』では、オンライン用に戦後の夏の甲子園大会に限定し、歴代の名勝負を紹介していきたい。 スライダーが真ん中高めへ

末野のチーム初安打がサヨナラアーチとなって勝利を手にした法政一
1984年8月11日
第66回大会=1回戦
法政一(西東京)1x-0境(鳥取)
※延長10回
「魔の1球」とは甲子園でよく使われる言葉だ。境・安部伸一の124球目はまさに勝利の女神に突き放される1球だった。
上手投げの安部はキレの良いスライダーをコーナーに決め、9回を無安打、奪三振9、四球1と完ぺきな投球。一方の法政一・岡野憲優も下手投げから超スローボールを駆使して打者を幻惑し、9回まで散発4安打に抑え、互いに譲らなかった。
延長10回裏、法政一は二死走者なしで打席には三番・末野芳樹。「スタンドへ打てる力のある者は思い切って狙え、と監督から言われていた。だから初球の真っすぐに絞っていた」という。
初球、「外角低めを狙ったスライダーが真ん中高めに入った」(安部)好球を、末野は見逃さなかった。バットが一閃。はじき返された打球は左中間ラッキーゾーンへのサヨナラ本塁打。安部にとってノーヒットノーランどころか、痛恨の一投になってしまった。
写真=BBM