
高校日本代表において日大三・日置(右)は不慣れな一塁守備を懸命に練習している。指導している小針コーチ(作新学院高監督、左)も熱血漢であり、日に日に成長が見て取れる
アジア選手権を戦う高校日本代表の今大会の登録メンバーは春、夏の甲子園と同様に18人。このうち野手は10人と限られたメンバーであり、複数ポジションを守ることが重要となってくる。
特に今回は内野手5人のうち4人が自チームで遊撃手。一塁、二塁の専門職がいない状況下で、4試合の強化試合を通じて、二塁にはチーム一の元気印である常葉大菊川・
奈良間大己が定着した。
一方、一塁手には投手登録だが、打撃好調の木更津総合・
野尻幸輝が入るケースが多くなりそうだ。三塁には主将・
中川卓也(大阪桐蔭)、遊撃には
小園海斗(報徳学園)。現状、ベンチスタートとなりそうなのが、日大三・
日置航である。
日置は1年秋が不動の遊撃手で、下級生からのレギュラーは同年代で一人。2年春、3年春、夏と3回の甲子園を経験し、名門・日大三高で主将を務め上げた超エリートである。スター軍団の高校日本代表では控えに甘んじる形となっているが、決して下を向くことはない。むしろ、向上心を持って日々の練習をこなしている。
侍ジャパンではチームが所有するファーストミットをはめる時間が長くなった。実は、一塁は未経験。不慣れなポジションを克服しようと、必死に白球を追っている。
日置を付きっきりで指導しているのが、小針崇宏コーチ(作新学院監督)である。8月25日から5日間の東京合宿を経て、宮崎入りした翌30日は「自主練習」の形が取られた。日置は小針コーチの指導の下で特守を始めた。捕球の難しい送球を、ショートバウンドでキャッチ。約30分、球際におけるミットの出し方と、タイミングを何度も確認していた。
9月1日の練習でも、打撃練習中に約30分の特守。熱血漢の小針コーチと真摯に向き合う日置の呼吸はバッチリで、日に日に技術が向上しているが目に見えて分かる。
「今までとは(守っている)景色が違いますが、できることを一生懸命やっていきたい。副将という立場でもありますので、より自覚を持ってチームを引っ張っていく」
ゲーム形式のノックでは、外野手との連係プレで、二塁をこなす姿も見られた。8月26日、結団式での日置の決意表明を思い出す。
「内野はどこでも守れます。チームに貢献できるように、自分の力を出し切りたい」
永田裕治監督は「前向きな子がたくさんいるのでありがたい」と語っていたが、日置もその一人だ。試合に出場できない悔しさは内に秘めて、献身的にチーム勝利のために動けるチームは強い。大会期間中、日置は大事な場面で必ず結果を残してくれるはずだ。
文=岡本朋祐 写真=BBM