見出したライバルの弱点

U-18アジア選手権(宮崎)。甲子園準優勝投手の金足農・吉田は中盤のヤマ場である韓国との一次ラウンドでの登板が予想される
第12回BFA U18アジア野球選手権大会(宮崎)で日本は開幕2連勝。すでにスー
パーラウンドへの進出を決め、今日18時から宿敵・韓国とのA組1位をかけた直接対決を控えている。
昨日の記者会見。韓国戦での先発を問われた永田裕治監督は「はい。決めています」と言ったが、具体名は明かさず「明日のお楽しみにしてください」と煙に巻いている。
とはいえ、その後の選手取材において、大本命に挙がってきたのが、金足農・
吉田輝星だ。ブルペンでは50球の投球練習。「韓国が相手なので、きっちりいかないと」。もちろん、本人も告げられた立場を明かすことはなかったが、その言動から先発の意気込みを感じた。
ライバルのビデオをじっくりと見てきた中で、一つの弱点を見出していた。
「韓国打線は日本みたいにシャープなスイングではない。大きなスイングをしてくるので、下からバットが出てくる打者については、自分の伸びてくるボールは生きてくると思う」
何とも理論的だ。地を這うようなストレートが吉田の武器。低めで「ボール」と判断したコースでも、スピンして浮き上がってくる真っすぐは、ストライクゾーンに来る。この特性を生かして、高めのコースで空振りを取っていきたいという。
この日の練習では、遠投を取り入れた。それはなぜか――。宮崎県高校選抜との壮行試合(8月31日)をテレビ観戦していた金足農・菅原天空の父・天城コーチが「頭が動いている」部分が気になったという。同コーチの息子で、金足農で一番を打った天空が、父を通じて吉田へ伝えた。「皿を頭に置いたイメージで投げた」と、しっかりと修正してきた。
韓国チームは世間に出回っている動画を参考に、「吉田対策」に余念はないという。だが、そこを逆手に取る強さが吉田には宿っている。
「警戒されている分、相手が反応しないボールは狙ってこないと思う。何も知らない一発勝負よりは対戦しやすい。反応を見ながらいいきたい」
“制限内”でのパフォーマンス
クレバーなエースの先発が有力視される中、今大会は「球数制限」がある。
仮に5日の韓国戦で上限の「105球」を投げてしまえば、中4日を置かないとならないルールため事実上(雨天中止でもない限り)、以後の今大会での登板は消滅してしまう(明日6日は休養日で、7、8日がスーパーラウンド、9日が決勝・3位決定戦)。
881球を投じた今夏の甲子園を見ても、吉田は「省エネタイプ」とは言えない。1回戦は157球、2回戦は154球、3回戦は164球、準々決勝は140球、準決勝は最少の134球で、5回で降板した決勝は132球だった。ただし、8月31日の宮崎県高校選抜との壮行試合は1イニングで11球と理想の球数。しかし、今大会における「先発完投」はまずあり得ないため、9日の決勝に万全の態勢で備える意味でも、5~6回を104球以内で乗り切ってほしいのが、永田監督の“本音”だろう。
永田監督は「中盤の大きなヤマ場。ゴールではない」と語っていた。先述のように、すでに一次ラウンド突破を決めている日本。チャイニーズ・タイペイ、中国と対戦するスーパーラウンドに勝てば再び、韓国と決勝で対戦する可能性がある。
甲子園優勝投手の大阪桐蔭・
柿木蓮、外野手、遊撃手もこなす同・
根尾昂も控えているが、この一次ラウンドで「すべてを出し切る」のは、得策とは言えない。表向きは「一戦必勝」と言いながらも、あくまで照準は決勝であり、先を見据えて、手の内を隠す「したたかさ」も見せておいたほうが良いかもしれない。
「大会前から韓国とチャイニーズ・タイペイを倒すと決めていたので、出たときには、自分のピッチングをしたい」(吉田)
起用はベンチが考えれば良いことであって、吉田は全力を出し切るのみ。「104球」という制限内でのパフォーマンスに注目が集まる。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎