左手に残る心地良い痛みと忘れられない感覚
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18人という限られた高校日本代表チームの中で、アシスタントコーチの役割は重要だ(写真は星原貴浩氏)
第12回BFA U18アジア選手権に出場している高校日本代表チームには「アシスタントコーチ」という役職がある。永田裕治監督以下(報徳学園高前監督)、仲井宗基ヘッドコーチ(八戸学院光星高監督)、平川敦コーチ(北海高監督)、小針崇宏コーチ(作新学院高監督)の3人が、指揮官をバックアップしている。
だが、18人という限られたメンバー編成でチームを回していくには、アシスタントコーチが重要な役割となっている。練習のサポート、打撃投手、そして、何より貢献しているのが、打撃捕手とブルペン捕手。今大会の捕手登録は2人で、各々がメニューをこなさないといけない時間もあるため、アシスタントコーチが“補充”するのは非常にありがたいのだ。
アシスタントコーチ2人の人選は毎年、センバツ開幕前日の「都道府県理事長・専務理事会議」で決まる。日本高野連・八田英二会長が、これまで選出されたことがない都道府県を対象に、抽選で引く形が取られている。
今回のアジア選手権は国内開催(宮崎)ということから、「土地勘もありますし、運営面でも力になっていただける」(関係者)と抽選なしによる優遇措置で、宮崎が選ばれた。残る1枠は通常の抽選で静岡が選出されている。
星原貴浩氏は都城泉ヶ丘高監督だ。捕手として活躍した同校OBで、高知大を経て、教員の道へ。母校を指導して12年目だ。
「投手のボールを受けるのが一番の仕事。素晴らしい機会を与えていただき、いろいろと勉強しています。宮崎開催ということで、私ができることすべてを出し尽くしたい」
大阪桐蔭高・
柿木蓮、金足農高・
吉田輝星など投手陣を相手にする中で、左手に残る心地良い痛みとともに、忘れられない感覚があるという。
「自分自身をよく知っており、考えてピッチングしています。また、入り方も良い。吉田君のボールは手元で『ドーン!!』とくる。ほかの投手とは違う球質。原コーチ(史彦、アシスタントコーチ)とも『怖いね!!』と話したこともあります。ここで得たものを学校へ帰ったら、選手たちに伝えたいと思います」
チーム内で兄貴分的存在
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原史彦氏
原史彦氏も捕手出身。日大三島高では高校通算20本塁打超の「攻撃型キャッチャー」としてドラフト候補に挙がったこともある。日大国際関係学部(東海地区)では2度、全日本大学選手権に出場。社会人で野球を続ける選択肢もあったが、教員の道を選んだ。
日大文理学部の科目等履修生で保健体育科の資格を取得し、沼津にある誠恵高に赴任。15年3月まで野球部長を歴任し、同4月に三島の知徳高に赴任し、野球部副部長となった。日大国際関係学部の恩師である和泉貴樹監督と高校日本代表・永田裕治監督とは旧知の間柄であり、「いろいろな方との縁があって、この場に立たせていただいています」と感謝の言葉を語った。
32歳と指導陣では最年少であり、チーム内でも兄貴分的な存在だ。
「私が何かを教えるということではなく、一緒に練習していく中で、自分自身も学んでいきたいですし、彼らの負担のならないような働きができればいいと思っています」
実際に選手から吸収したことがある。
「テレビでは見られない意識の高さ。東京合宿中に栄養指導があった直後、すぐにその知識をフルに活用している姿が見受けられました。これが、トップアスリートなんだな、と」
ただし、感心しただけではなく、取り組んできたことが間違いでないことも気づいた。
「話を聞いてみても、練習メニューとかは大きく変わらない。どこで差が生まれるのかと言えば、さきほども言った意識の高さと目標設定なんです。勉強になっています」
18人の選手は高校日本代表で得た多くの収穫を自校へ持ち帰るが、アシスタントコーチ2人も、指導に生きる生の教材を得て、勤務先の学校へ戻るのである。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎