楽天の和製大砲候補として期待されているのが内田靖人だ。今季はオープン戦で首位打者となり、開幕一軍をつかんだ期待の若手。だが開幕すると、7試合連続無安打に陥るなど、結果を求めるあまり苦しみ、二軍落ちを経験した。
内田のように一軍と二軍の狭間にいる選手たちは生き残るために結果を求め、それが気持ちに焦りを生み、なかなか結果を出せなくなる。そんな若手選手に対し、気持ちに余裕を持つように伝えているのが解説者の
内藤尚行氏だ。
「良いところで打たなければと思うのではなく、まずは複数安打でいいんです。監督は使い勝手が良い選手を求めている。今後主軸として打席に立つようになれば勝負強さも大事になりますが、今はまず、ヒットを出すことを考えたほうが良い」
一、二軍を行き来することも多かったが、9月に入り調子の浮き沈みが減ってきた内田。今季はすべての数字で自己最高をマークしている。シーズン中、何度も楽天生命パークを訪れている内藤氏はその活躍に目を細めた。
「チームが来季以降を見据え、若手中心のメンバーに切り替えたことで、最近はラクな気持ちで打席に立てているよね。それはすごく大きい」
だが、課題もまだあるという。
「ドアスイングになっているので、少し振り遅れているようです。このクセを直すのはなかなか難しいんだけど、そこが直ればもっともっと結果が残せると思いますよ」
一軍投手の球を確実にとらえるには、「(ドアスイングは)ビデオで見てもなかなか分からない」というそのわずかな差が大きく影響するのだ。
2ケタ本塁打まであと1本と迫っている内田に対し、さらなる期待も寄せた。
「10本打ったら大きいですよ。それだけで自信になるし、2ケタ本塁打というのはプロ野球選手としてひとつの目標となる部分ですからね。10本塁打はクリアしてほしいですね」
今季苦しんだ経験も、その中で得た結果も来季以降の糧となるはずだ。シーズンは残りわずか。貪欲に結果を求め、少しでも多くの自信を手にしたいところだ。
文=阿部ちはる 写真=BBM