
今年もドラフトで104人が指名され、プロの門を開いた
幼きころに抱いた憧れを、あなたは、今も覚えているだろうか――。
10月25日に行われたドラフト会議。12球団計104人が指名され(育成を含む)、プロの門を開いた。ただ、近年は、そんなプロへの“憧れ”の意味合いが薄れつつあると感じてならない。
ドラフト候補を取材する際、定番の質問をぶつけてみる。理想の選手や憧れの選手はいるか――。すると「特にいません」という答えが増えてきた。それどころか、「ほとんどプロ野球を見たことがないんです」という選手も少なくない。
2017年、ドラフト1位で
オリックスに入団した
山岡泰輔に聞いた際には「プロ野球を見ることはなかった」ときっぱり。翌18年のオリックスのドラ1左腕・
田嶋大樹も同様で「見る機会がなかった」と答えている。
今年も同様だった。ドラフトの目玉とされ、4球団が競合した
根尾昂、3球団競合の
藤原恭大(ともに大阪桐蔭高)は、国体時に
西武対
ソフトバンクをテレビ観戦したというが、それまでは「見ることは、あまりなかったです」と異口同音に語った。
そもそもアマチュアの選手たちにとっては“見ること”よりも、自身の練習のほうが先。だからこそ、世代のトップを走り続けたとも言える。さらに、近年は地上波でのテレビ中継が減り、プロの映像を目にするにしても、ニュースでのダイジェストがほとんど。“試合”を目にする機会は、CS放送や有料ネット中継など“お金”をかけなければ得られない。
プロ入りが現実的なドラフト候補たちにとっても、憧れの意味合いが薄れつつあると感じずにはいられないプロの世界。だが、彼らは決まって口にする。
「プロに入ることが目標ではなく、活躍することが目標です」
プロをイメージできずに、いかにして“活躍”に必要なことを見出すことができるのか。画面越しでも分かるほどの速球に、度肝を抜く打飛球の本塁打――。ハイレベルな攻守のせめぎ合い中に、自分も身を置きたい。そんな憧れも、自分の技量を感じる術となり、さらなる努力を後押しするはずだ。
今、熱戦が繰り広げられ、地上波で放映されている日本シリーズは貴重な“試合”を目にする機会。白熱の試合を、多くの野球少年たちに見ていてほしい。強くプロを志す選手が増えるためにも。
文=鶴田成秀 写真=BBM