野球人として変わる契機に
早大の新主将に就任した加藤。来年1月1日に就任する小宮山次期監督を、来春の神宮で胴上げすることを誓っている
早大は11月11日、2019年の新チームが始動した。新チームのスローガンは、部員による発案により『ONE』に決まった。第109代主将に任命された
加藤雅樹(3年・早実)はその意図をこう説明する。
「日本一。リーグ優勝。皆が各々の役割を持ち、唯一の存在となる。全員が一つになる。『1』にまつわるいろいろな意味があります。今回は11月11日に新チームをスタートすることもできて、良いスローガンだと思います」
この日は、早大にとって特別な1日となった。来年1月1日付で、OBの
小宮山悟氏(元
ロッテほか)が次期監督に就任する。11、12月は「特別コーチ」という立場で指揮を執るが、11月11日が指導初日であった。練習前には安部寮1階の講堂で、全部員105人が集まっての初顔合わせが行われた。冒頭、小宮山氏があいさつ。加藤は背筋を伸ばして聞いた。
「野球部員は一般学生とは違う、と。自覚を持って行動するように言われました。あらためて早稲田大学野球部とは特別な存在なのだ、と。プライベートから、周囲から見られていることを意識して動いていかないといけない」
指揮官の言葉の後に新役員が発表された。加藤は高校時代に続くキャプテンの大役。ミーティング前に小宮山氏から呼ばれたという。
「チームのこと! チームのこと! でななくていいから……。自分のことを一生懸命、やってくれればいい」
次期監督の指示を、加藤はこう受け止めた。
「周りは自分の姿を見ている。一つひとつの行動について考え、自発的に動きたいと思う」
早実では高校通算47本塁打。4強に進出した3年夏の甲子園では、当時1年生の
清宮幸太郎(
日本ハム)とクリーンアップを組んだ。早大では2年春に首位打者。今春は打率.333も、秋は相手校の徹底マークもあり、本来の力を出し切れなかった。だが、シーズン途中、トップを作る前にバットを寝かせる新打法に改造すると、復活への手応えをつかんだ。
「人として成長しないと、野球もうまくならない」
主将就任は良いタイミングだった。加藤は卒業後のプロ入りを目指しており、来春へ向けては「もう一度、首位打者を獲りたい」と気合十分。小宮山新監督の就任も、加藤が野球人として変わる契機となった。
「新しい早稲田の野球部が始まる。すごくチームの雰囲気も良いです!!」
指導者と選手との間に、早くも絆が生まれた早大。加藤はチームを代表して言う。
「監督についていくだけ。(優勝して)胴上げをして、就任して最初の4年生が自分たちで良かったと思ってもらえるような行動をしたい。最終的に、そこへ持っていきたいです」
新リーダーが次期監督と強力タッグを組み、2015年秋以来遠ざかるリーグ優勝をどん欲に狙う。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎