読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。 Q.内野手の基本は低く構えて、グラブを下げると教わりました。軟式野球でも同じですか? ゴロが跳ねるので、グラブを低くしないほうが守りやすいと思います。軟式での内野の守り方を教えてください。(埼玉県・12歳)
A.“捕球”の基本的な考えは軟式も硬式も変わりません

元中日・井端弘和氏
まず初めに守備の基本的な考えとして、捕球するのは(1)ショートバウンドした直後(瞬間)、(2)弾んだ打球が最高到達点に達し落下してくる途中の2つが挙げられます。これらは最高到達点に達する途中などと異なり、スピードや打球の動きに変化が少なく、捕球がしやすいからです。この基本は軟式も硬式も変わりはありませんので、頭に入れておいてください。
ただし、質問の方が言うように、軟式の場合はゴロがよく跳ね、硬式はあまり跳ねないという違いがあることも確かです。バウンドが高く跳ねやすい軟式ボールへの対応ということでは、常に低い姿勢で構える必要はないのではないか、というのも理解できます。
とはいえ、質問の方は12歳です。小学6年生か中学1年生かと思いますが、この後、進学していったときに、軟式を続けるのでしょうか。私も軟式出身で、中学進学を機に硬式のチームに入りましたが、最初に戸惑ったのが打球の速さです。芯を食った打球は特にスピードが速く、「カンッ」と打った次の瞬間にはもう体の近くに来ているくらいの感覚がありました。
ここで仮に腰高の、グラブを下げない守り方が体に染みついていたとしたら、どうでしょうか。硬式の速い打球はすべて足下を抜けていき、ピッチャーが打ち取った打球でもすべてバッターの出塁を許すことにつながってしまいます。だからこそ、低く構えて、グラブは下におろして待つことがあくまでも「内野手の基本」なのです。
質問の方が軟式で終わる、と言うのであれば話は別ですが、ゆくゆくは硬式に、と考えているのであれば早い段階から「内野手の基本」を身に付けておいて損はないでしょう。クセになってしまった動きを改善するのは、なかなか大変ですからね。
「内野手の基本」は軟式にも硬式にも通用する考えです。低い構えから跳ねる打球には対応できますし(逆は前述のように対応は難しい)、高く跳ねてなかなか来ない軟式特有のバウンドに対しては、この低い構えからフットワークを使って素早く前に出て処理してあげればいい。ライナー性の低い打球は、グラブを下げて低く構えているのですから、難なく処理できると思います。
●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に
巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。
写真=BBM