
阪神ドラフト1位の大阪ガス・近本は初の社会人ベストナインに輝いた(左は表彰のアシスタントを務めたミス日本・市橋礼衣さん)
猛虎に明るい未来を感じた。阪神ドラフト1位・
近本光司(大阪ガス)の言葉力に驚いたのである。
12月13日、2018年度社会人野球表彰が東京都内のホテルで行われ、初のベストナイン(外野手部門)を受賞した近本が表彰を受けた。
表彰式の後は同会場でのパーティーとなり、歓談の後、各受賞選手があいさつ。さすが社会人のスピーチであり、皆、内容のある話だったが、中でも出席者のハートをグッと胸をつかんだのが近本であった。
まずは、個人的な受賞の思いを語った。
「入社してからベストナインを目標に頑張ってきて、獲れたのは光栄。日本一になれたのは野球人生の中でうれしい出来事でした」
近本は今年7月の都市対抗で大阪ガスを初制覇へと導き、首位打者とMVPに当たる橋戸賞をダブル受賞している。選考理由として「巧みなバットコントロールとパンチ力に加えて俊足も魅力」とあり、11安打を放ち、1本塁打、5打点と、関学大から入社2年目で、文句なしの初選出だった。
これだけで終わらないのが、近本。人間的な魅力、独自の視点が言葉に詰まっていた。
「来年からは夢を売る仕事に就く。野球人口の減少、野球離れが問題になっている。私の出身地である淡路島も少年野球チームが統合されたり、競技人口が減ってきている。社会人は知名度が高いとは言えません。プロ野球選手になっても、アマの最高峰である社会人をもっと野球を盛り上げていきたい」
実際のところ、ルーキーならば、目の前のプレーに集中したい思いがあり、自身のスタイルをまず、アピールしていきたいはず。しかし、近本には球界全体を見渡す広い視野がある。こうした一歩引いた角度で動ける選手というのは、ゲームにおいて、また、大観衆の甲子園でも冷静かつ大胆なプレーを展開できるだろう。
阪神での背番号は「5」と、球団の大きな期待を感じる。170センチ。今回の社会人野球表彰選手の中では最も小柄で、そのスーツ姿からも、街中を歩いていればエリートサラリーマンと間違えてしまいそうなほどスマートだ。しかし、それは錯覚にすぎない。近本にはプロ野球選手として生きていくための強い芯がある。一軍で結果を残した上でチームリーダーとなり、将来的には球団を背負う幹部候補としても十分、貢献しそうなキャラクターであると確信した。
文=岡本朋祐 写真=小山真司