読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。 Q.中学の軟式のクラブチームで指導をしています。3年生がチームを引退し、新チームへと移行していますが、二遊間のポジションを決めるのに頭を悩ませています。そもそも、ショート、セカンドにはそれぞれどのような適性を見て選手を配置するのがベストなのでしょうか。肩の強さ、足の速さ、守備のうまさなど、基準を教えてください。(富山県・33歳)
A.ショートには第1にフットワークと敏捷性が求められる

イラスト=横山英史
私の個人的な見解ですが、ショートには一番動きの良い選手を選びたいところです。「動きが良い」というのは、必ずしも足の速さと直結するものではありません。直線的な速さがあるに越したことはありませんが、ショートは100メートル走の勝負をするわけではありませんから、そのスピードとは分けて考えてください。私もそこまで足の速さがあったわけではありませんでした。
では、「動きが良い」とは何かというと、フットワークの軽さ、アジリティー(つまり敏捷性)のことです。内野手、特にショートは一歩目、二歩目の瞬発力がすべてを左右します。この出足の速さがあれば、そもそもの足の速さは気にする必要がないわけです。これは鍛えればある程度まで引き上げられるものではありますが、現段階でポジションを決めるなら、もともと持っている選手をショートにしたほうが良いと思います。
その中で一つのプレーに対する正確性があるかないかももちろん大切ですが、それ以上に判断の基準となるのが捕ってから投げるまでの一連の動作をスムーズにできるか、できないかでしょう。もちろん、スムーズにできる選手がショートに適性があります。仮にフットワークも良く、動きの良さも捕球技術も変わらない2人の選手がいて、一方の選手がスローイングの動きにぎこちなさがあるのであれば、その選手はセカンドに配置したほうがチームのためになると思います。
というのも、一塁まで距離のあるショートでは、捕ってからロスなく素早い送球が求められます。高いレベルに行けば行くほど、そこはゼロコンマ数秒の世界になる。捕ってから送球が遅れるようであれば、相手に出塁を許してしまいます。一方で、セカンドは一塁までの距離がショートに比較すると近く、極端に言うと捕ってから送球までごまかしが効きます。
おさらいすると、二遊間を決める判断の基準は(1)フットワーク、(2)正確性、(3)スローイングの動作がスムーズか、です。ここまでで絞れないことはないと思いますが、さらに言うならば肩の強さでしょうか。私はそこにあまりこだわりは見いだしていなかったですが、あくまでも参考までに。
●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に
巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。