
2007年から4年間、巨人でともに戦っていた伊原氏(左)と原監督
監督とはどうあるべきか――。
2002年、
西武で初めて監督を務めたとき、
伊原春樹氏は先人たちが残した言葉が記された書物などを読んで勉強を欠かさなかったという。そんなときに目に飛び込み、心にストンと入ってきたのが中国春秋時代の軍事思想家の孫武が説いたとされる「孫子の兵法」に挙げられていた、上に立つ人間に必要な要素だった。それは「智」「信」「仁」「勇」「厳」の5つだ。
それぞれ説明するとこうだ。
「智」は頭の動き。
「信」は他人からの信頼。
「仁」は人間味があること。
「勇」はイエス、ノーをはっきり言えること。
「厳」は厳しさ。
頭の回転が良くなければ監督は務まらないし、他人からの信頼も当然必要だ。その中で人間味もなければいけないし、何事もあいあまいにするのではなくイエス、ノーをはっきりとしてチームが進むべき道も示さないといけない。さらに厳しさもなければ甘えが生じてしまう。
伊原氏の知る限り、このすべてがそろっているのは今オフ、3度目の巨人監督となった
原辰徳監督だという。伊原氏は2007年から4年間、ヘッドコーチとして原監督を支えた。
「常勝が義務付けられている巨人にあって、4年間、優勝を逃している現状は許されるものではない。低迷を打破するためには、経験が豊富で、監督としての資質がそろっている人間でなければ難しいだろう。巨人には監督は生え抜きのスターという縛りもある。そうなってくると原監督しかチームを託せる人材はいない」と伊原氏。
原監督が先頭に立って戦力を整えている巨人。来季は十分、優勝の可能性があるとかつての参謀役は見ている。
文=小林光男 写真=BBM